その先へ

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いつからか、帰り道は並んで歩くようになった。 中学に入ってなんとなく喋らなくなったけれど、俺が走るのを優衣はいつも見ていて、俺もそれを意識していた。1年のバレンタインにチョコをもらった時も、正直、貰えなかったらどうしようかと思っていたくらいだ。 2つ上の姉ちゃんに相談して、ホワイトデーにお返しをしたけど、姉ちゃんのにやけた顔は今でも忘れられない。 なんでそんな顔してんだよ、と言ったら、あんたも同じ顔してるよ、と言われた覚えがある。 高校は、たまたま通いやすい地元の公立が部活も盛んだったのもあるけど、遠くに通うのを心配していた優衣の親が、ここならば、と選んだうちの1校だった。 頼んだ訳ではないけど、優衣は陸上部のマネージャーに志願した。最初渋っていた顧問が熱意に負けて入部を許可してからは、笑顔で毎日頑張っている。 俺は皆にからかわれたけど、隠す必要もないし、何より優衣と過ごす時間が長くって、帰りに送っていける安心感もあった。 とにかく俺は、優衣のことがずっと好きなんだ。 「集合」 準備運動をしていると、顧問が部員を集めた。 タイムの確認だ。優衣の「惜しかったね」という言葉が頭の中で鳴り響く。 まだ2年ある。けれど、2年しかない。 俺は結果を出したくて既に焦っていた。 「お前は、フォームは綺麗なんだけどな」 線の細い俺には、顧問の言う意味はわかっているけど、筋トレで無理しちゃいけないのも身に染みている。 けれど、俺は走る。 走れ、と声が聞こえる。 追い立てられるように、俺は走る。
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