その先へ

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その日も結局、帰りは優衣と一緒に帰った。周りからみたらいつも通りだったろう。帰宅してから、お母さんたちに優衣からのチョコを渡す。 「優衣ちゃんも、マメね」 姉ちゃんが袋から出した生チョコを頬張りながら言う。小学4年の時に家庭科クラブというやつに入った優衣は、6年だった姉ちゃんとそこで一緒に活動している。姉ちゃんは食べる方が好きみたいだけど、優衣はずっと、何かしら作るのが好きなタイプだった。 「元々、作るセンスってのがあるんじゃないの」 俺も、自分用にもらった生チョコを口に入れる。毎年、違うチョコを作るのだ。去年はもっと長い名前の、ケーキみたいなやつだった。 「センスがあるってだけで、味がわからないような彼に何年も手作りチョコを作らないでしょ」 「姉ちゃん、ひでえな」 ひどいのはどっち、と姉ちゃんがさらに言う。 「あんたはたまたま優衣ちゃんが美味しいお菓子を作ってくれるけどね、上手な子でも最初は難しいんだから」 「なにそれ」 はあ、と姉ちゃんがため息をついた。 「優衣ちゃんはきちんと一人で頑張ってるってことよ」 夜、頭の中で言葉がぐるぐると回る。 姉ちゃんは、優衣が進路先に調理師の専門学校を考えていると教えてくれた。俺は初耳だったけど、既に受験というものを経験した姉ちゃんに相談するのは確かにと思ったし、俺が聞いたところで何も言うことはなかっただろう。 私のためなら走るのをやめて。 そう言った優衣は、自分自身のために頑張っているのだ。 ベッドに寝転び天井を見ながら、俺は考える。 自分は誰のために走っているのか。
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