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 ふいにテーブルの上のスマホが震え、悠介は一旦箸を止め、口の中のものを飲み込んでからスマホを手に取り耳にあてた。 「……はい」 『岩瀬? もしかして、いま実家か?』 「ああ。言ってなかったっけ?」 『いや。帰るかも、としか。……その後、親父さんどうだ?』 「症状は落ち着いてる。この間言ってた手術、来週に決まった」 『──そうか。とりあえず、良かったなって言っていいのか?』 「まぁ、とりあえずね」  電話の主は、成島瑛士。高校の時の同級生であり、現在は悠介の恋人でもある。  悠介はこの辺りでは割と学力レベルの高い男子校に通っていた。なぜ男子校か、といえばただ家から近かったことと、当時の悠介の学力に合った高校だったからということ以外に特に理由があったわけじゃない。  クラスメイトとして知り合った成島とは、なんとなく一緒にいるようになったが、当時から今のような関係だったわけでもなければ、付き合いが続いていたわけでもない。成島と今のような関係になったのは、お互い社会に出て何年か前に偶然再会を果たしてからの事だ。 『仕事は?』 「うん。普通にしてる。多少気ぃ使ってもらえてんのか、早く帰してくれてるけど。今週暇だったからあれだけど、来週はそうもいかないし、手術の日は姉ちゃん来てくれるから」 『……そうか、ならいいけど。つか、連絡くらい寄こせよ』  父親が倒れて一週間ほど経つが、悠介自ら連絡を入れたのは当日くらいのもので、あとは成島からの連絡にSNSアプリのメッセージで返信を返す程度だったことを思い出す。 「悪い、バタバタしてて……。来週はそっち帰るから」 『分かった。んじゃ、来週な?』  そう言って成島は用件のみで電話を切った。こういう深くを追求しないあっさりとしたところが、成島のいいところだと思っている。
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