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 仕事を終えた哲平は自宅に帰る途中、コンビニに立ち寄った。  今夜は父親が職場の飲み会。母親はそれを狙ったかのような友人たちとの夕食会。妹の梢は仕事帰りに彼氏とのデート。珍しく家には誰もいない。  普段は母親が夕食を用意してくれているのだが、さすがに今夜は息子一人だけのために夕食を用意していく気分にはならないのだろう。今朝家を出る際に、夕食は自分で何とかしてね、と母親に念を押されている。  料理ができないというわけではないが、帰宅後にわざわざそれをする気力も残っておらず、迷わずコンビニ飯を選んでしまうあたりは致し方ない。 「何食うかなー」  そう小さく呟いてコンビニに入るなり店の奥の冷蔵庫に向かうと、お気に入りの銘柄の缶ビールをカゴに放り込んだ。その足で弁当コーナーに行くと、見知った男の横顔を見つけ、その男が手にしたカゴの中身を横から覗き込んだ。 「はは。悠介もコンビニ飯かよ」  そう声を掛けると、ハッとした悠介がこちらを見て驚いた顔をした。 「お、わ。……なんだ哲平か、びっくりした」 「こっち帰ってんの?」 「──ああ。親父のことで母さん参ってるみたいでさ。家にいてもろくに寝れてないみたいだし、さすがに心配で」  悠介の父親が救急車で運ばれたあの夜からすでに一週間が経とうとしていた。 「おじさん、結局何だったんだ? そんな悪いのか?」 「……ん。ちょっとな」  悠介が周りを気にするように少し声を落とし曖昧に答えた。  確かにこんなところでする話でもないと思い、哲平は目の前の棚から適当に弁当を選んで、先にレジに並んだ悠介の後に続いた。  真後ろからちょうど目の前にある悠介の後頭部を眺めた。少し色素の薄い茶色がかった髪の色や柔らかそうな質感は昔のままだ。
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