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出逢い
ある秋の日曜日。
雨あがりの午後。
色づいた葉は水を纏いキラキラと輝いていた。
見上げた空はどこまでも水色に透き通っていて。
歩くたびに落ち葉はかさかさと音をたてた。
雨宿りをしていた小鳥達が一斉に飛び立っていった。
誠一は妻のあゆみとともに、その子を見つめていた。
この日、二人に天使が舞い降りた。
「生まれてきてくれて、ありがとう。私の赤ちゃん」
生まれたての赤ちゃんを抱きしめて、あゆみは頬づりした。
「本当に可愛いな」
覗き込んだ誠一は、ふかふかの手をつついた。
誠一のその指を、もみじよりも小さな手がギュッと握りしめる。
あたたかいと思った。
木漏れ日の中に咲くコスモスのように、ゆらゆらと誠一の胸の中で緩やかな風に揺れる。
「ねえ、あなた、名前はどうする? 」
「キラキラした瞳で見つめてくるから、名前は“瞳”にしよう」
こうして“瞳”は二人の家族になったのだった。
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