団欒

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団欒

 瞳はカーテンを勢いよく開けた。  空は青く澄んでいて、瞳の心を表すような快晴で気持ちがいい。  ベットサイドの目覚まし時計が鳴り響き、ようやく自分の仕事をする。  目覚まし時計よりも早く目が覚めたのは、心が弾んでいるからなのだろう。 「うーん」と一つ伸びをして、着て行く服のチェックをする。  今日はオシャレにも気合を入れて最高な気分でお出掛けしたい、と瞳は思った  空腹を覚えた瞳はトントンと軽快に階段を降りて行く。  先ずは洗面台へと向かい、冷たい水で顔を洗う。  鏡の中の自分にニコッと微笑みかけてから、リビングへ入っていった。 「おはよう。ママ」    キッチンに居るあゆみに声を掛けた。  パパも弟妹達もまだ居ない。  今朝は瞳が一番乗りのようだ。 「あら。おはよう。今朝は早いのね」  あゆみは目玉焼きを作りながら、手早く朝食の支度を進めつつ、瞳に笑顔を向ける。 「うん。朝から出掛けるから」  あゆみの姿は、ナチュラルメイクにワンピース。  ワンピースの上には可愛いエプロン。  セミロングの髪は、今は後ろでネジってバレッタで留められている。  そして、耳にはダイアの小さなピアス。  このピアスは誠一が何ヶ月もお小遣いを貯めて、結婚20年目の記念日にプレゼントした物だ。  あゆみはこのピアスをことの外気に入っていた。  きっと、そんなに高価なものじゃないとは知りつつも、とても大切にしていて毎日付けている。  瞳は、専業主婦なのにいつもそこそこ綺麗にしているママは偉い、といつも思う。  (あたしなら、お出掛けしない日はオシャレに手を抜いちゃうけどなぁ)   「そう。晩ご飯は?」  (パパのために、新聞取ってきてあげようかな) 「お家で食べるよ」  後ろに声を掛けながら、玄関に新聞を取りに行くと誠一がいた。 「おはよう。瞳。今朝は早いな」 「おはよう。パパ。ママとおんなじ事言わないでよ! 」  ははは、と誠一は笑う。  高校生の弟、(みさき)と、中学生の妹(つばさ)も降りてきて、リビングは一気に賑やかになる。  あゆみが食後のコーヒーを勧めるが、今朝は急ぐからと瞳は申し訳なさそうに断った。  部屋に戻って準備を急ぐ。  本当は別に急ぐ必要もないのだが、楽しみ過ぎて気が急いてしまうのだろう。  準備が出来てリビングをのぞくと、まだみんなは寛いでいた。 「じゃ、お昼には戻るから。行ってきまーす」 「行ってらしゃい」とあゆみ。 「気をつけるんだぞ」と誠一。 「なに?デート?」と岬。 「お姉ちゃん、可愛い〜」と翼。  家族からそれぞれの言葉を貰って、意気揚々と家を後にした。
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