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どこをどう歩いたんだろうか。
家に帰り着いたのは、夕方だった。
中に入ると、あゆみは台所で夕飯の支度をしていた。
今朝と変わらないワンピースにエプロン姿のあゆみは普段通り手早く料理をしていた
「お帰り瞳。 遅かったのね。今日は大学休みでしょ? 一体、何処へ行ってたの?」
「うん。ちょっとね 」
たんぽぽの様な笑顔で出迎えてくれたのに、あゆみの顔が見られない。
足元へ目をそらす。
今、顔を見てしまったら、気持ちが溢れ出して涙が出てしまいそうだ。
“ねえ。ママ。あたし、ママの本当の子供じゃないの? ”
聞きたいのに。
喉に使えて、上手く言葉が出せなかった。
“だって、言ってどうするの?”
“そうだよ。って言われたら?”
“あたし、どうしたら良い?”
胸の中に次々と浮かんではしぼんでいく。
瞳は顔を見られたくなくて、すぐに自分の部屋へ駆け上がった。
部屋に入るとすぐに、力なくベットに崩れ落ちる。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
弟の岬と妹の翼は、誠一とあゆみの子供に間違いない。
あゆみのお腹が少しずつ大きくなるのを、間近で見ていた。
二人が産まれたときには、誠一と一緒に病院にも行った。
弟妹ができた事が、本当に嬉しかった事を思い出す。
ねぇ。あたしだけ?
あたしだけ本当の子供じゃないの?
なんで?
どうして?
答えを探して当て所もなくグルグルと考えた。
しかし、何処を探しても、答えは出て来ない。
気がつくと、部屋の中は暗くなっていて。
自分自身の存在が、暗闇に混じって見当たらなかった。
真っ暗闇で探せない。
“あたし、今、いったいどこに居るの?”
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