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真実
「瞳ー! ゴハンよー! 降りてらっしゃい」
階段の下からあゆみが呼んでる。
リビングに行くと、岬と翼がゲームの対戦をして、キャッキャと盛り上がっている。
そういえば、岬も翼も髪質は張りの有るストレートだ。
瞳のように、癖っ毛の細い猫毛じゃない。
血液型だってそうだ。
誠一はAB、あゆみはO。
O型の子供は、生まれて来ないのではないだろうか。
どうして今まで気が付かなかったんだろう。
「あ、お姉ちゃん! 岬がズルするー! なんとか言ってやってよー 」
“まったく。私の気持ちも知らないで、あんた達は平和で良いわね。”
「ズルじゃねーよ。翼が下手なだけだろ! 」
瞳は2人を無視してダイニングに行った。
ダイニングテーブルでは、誠一が夕刊を読みながらビールを飲んでいた。
“この人もあたしの本当のパパじゃないんだよね?”
瞳の席は誠一の前だ。
新聞越しに見つめてしまう。
誠一は、今、どんな顔してるのだろうか。
本当はいつか養子の事がバレるのではないかと、内心ビクビクしているのではないだろうか。
“パパ、本当の事教えてくれる?”
“あたし、本当は誰の子なの?”
“あの書類は間違いだよって言って”
“ねえ、パパ”
“パパ”
不意に誠一が新聞を畳んで瞳に目を向ける。
「瞳。どうした?」
どうした、とは一体どうしたというのか。
「どうして泣いてる? 何かあったのか?」
そう言われて、頬に手を当てる。
確かに手のひらは濡れていた。
冷たい涙が、頬を伝っていた。
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