「あの、それ、ください。」
_______おそらくこの店一番のおススメ品らしい服に身を包んだマネキン人形を指さして。
マネキンは片手に値札つきのお洒落なバッグを持ち、焦げ茶色の大人っぽい上着を着こんでいた。
下にはいている水色のスカートも、半透明で下にシフォンがあって、すごく優雅だ。
長いハイソックスは黒地に黄色いラインが入っていて、足がスッキリして見える。
足元の靴は色鮮やかな、真っ赤なハイヒールだった。
「ああ、裏に同じものがありますよ。」
「本当ですか!?わあ嬉しい、見た瞬間に一目惚れしちゃって。」
照れながら私が言った言葉に店員の男性は笑うことなく頷く。
「よくいらっしゃいますよ、そういう方。見たとたんに、ああこれは自分に合うなって。」
「分かります分かります!私もよくそう思うんですよね。それで、同じものっていうのは?」
「そうでした、失礼しました。今持ってきますね。」
一旦奥に引っ込んだ店員は、バッグからスカート、靴まで、全部そろえて持ってきた。
「はいどうぞ、どれにいたしますか?それとも全部?」
「え?」
私は驚いて店員を見た。
この人は何を言っているのだろうか。
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