「あの、一目惚れしたっていうのは、マネキンに、ですか?」
「だからそう言ってるじゃないですか。あのマネキンの顔の堀の深さ、横顔のライン、ポーズ、腕や足の長さと太さ、胴体のバランス、何もかも完璧ですよ。すごいですよねここ、よっぽどお金があるんでしょ?あんなマネキン私見たことないです。是非ほしいんですが、ダメですか?」
「あー……すみませんそれは、店長に聞いてみないと。」
店員は変人を見る目を私に向けながら、そそくさと店の奥に下がっていった。
やがて、愛想笑いを浮かべながら戻ってくる。
「大丈夫だそうです。でもあれには見ての通り商品の服やバッグなどを着せているので、同じ型のマネキンを作って後で配達させていただいてもよろしいでしょうか?」
「えー、ダメですよ。私はあのマネキンに一目惚れしたのであって、他のマネキンに興味があるわけじゃないんですよ?」
「……失礼します。」
店員は再び下がっていった。
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