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『私、生まれ変わったら石になりたい』
そう母に零したのは小学生4年生の時だった。
聞きたくも無い耳障りな声が聞こえて、堪らない苦痛を訴えたつもりだった。
モチーフは古い映画『私は貝になりたい』からだった。
もう人と関わりたくないと、人間不信に陥った主人公が漏らしたセリフだと認識している。
貝よりは石の方がいいよね。
貝だって、生きている。貝には貝の心があって然るべきだと思ったのだ。
『石だったら何処にも行けないよ。コツンと、蹴られてテン、テン、テンよ』
娘の切実な嘆きに、面白可笑しい擬音を付けて母は結んだ。
どういう訳か、それがツボってしまった。
私はお腹を抱えて吹き出した。
何処までも能天気な母に、私の悩みは小さなものだと教えられる。
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