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「私、人の心が視えるんだよね……」
思わず零したセリフに聞き耳を立てる人がいないことも承知の上だった。
今やクラスは騒然としている。
クラスメイトの大半が席を立ち、特に女子は狩人に変わっていた。同じ班になる子をキープしに、目をギラつかせている。
チラリと、男子を見遣る。
『お前ら、怖えぇよ……』
全くもって同感。肉食女子の浅ましさに当てられ、彼らは窓際で子羊の如く怯えていた。
「私も、男子に産まれたかった……」
そして、堂々と硬派を気取るのだ。
『何でもかんでも金魚の糞なんてだっせぇよ』
なんてヒールな感じで言ってのけ、一匹オオカミ上等なんて鼻で笑うの。
先生はといえば、既にニヒルな笑みを残して職員室に消えていた。
『せいぜい時間いっぱい揉めに揉めて、決めるんだね』
そう心の中で嗤っている。
それもその筈、うちのクラスの2大派閥AとBグループは5人組。3対2に別れなければならない。
とは言え、此処までならそう揉めない。
揉めるのは二人組のグループ。
入れてもいいと妥協できる一人枠がいないのだ。
そしてペアの彼女たちが離れるなんてことは在り得ない。
一生の思い出にしたい修学旅行が、ポッチだったなんて黒歴史を作る気は無いからね。
そうこうするうちに3人組グループは悠然と決まって、既に自由時間に何処を回るのかの相談になっている。
「ちょっと、私らがそこのグループ取ってたんだからね!」
甲高い声がクラス中に響いた。
あらあら、女王様の降臨だわね。
そう、揉めるのは何も女子の編成だけではないのだ。
一緒のグループになる男子も超重要。
既に男子は編成済みで、1~6班のサークルにそれぞれ名前が記入されていた。
「『取ってた』って、早い者勝ちってことよね?なら、私たちの方が先に書いてるんだから……」
同じ班の子たちが確と頷いて見せ、援護射撃を打つ。
いつもの彼女なら、女王様に意見しないけれど、今回は違った。
さすが修学旅行、心残りはいただけない。
「まだ皆決まってないんだから、そこは待ちなさいよ。不公平じゃない」
だったら、『取ってた』の前のセリフは一体何だったのか?
けれど、『不公平』の言葉に、渋々彼女は名前を消した。
それを確と見届け、女王様は満足げに笑んだ。その彼女に後ろから抱き付いたのは、同じAグループの一人。
「流石!良く気付いた」
同じくそれに駆け寄るもう一人。
「そうそう、男子勝手に決められてたらシャレになんないよ」
「でしょっ、でしょっ?」
きゃっ、きゃっ、と盛り上がる3人。
あ、これで決まったな。
5人という小さな世界でもカースト制度は有効だ。
一瞬にして彼女たちは暗黙の裡に取捨選択をした。不平を言うでもなく、取り残された二人組はチラリとBグループを盗み見る。同じくBグループも安堵組と溜息組。
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