31人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕が五枚、山茶花さんは六枚残った。僕の負けです」
柊がぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございました」
山茶花も頭を下げる。
「随分『数国』をやり慣れていますね、その若さで」
「柊さんほどでは、ないです」
たったの一枚差でギリギリ勝てただけだった。
手札が一つ違えば、負けていた。
山茶花は机の上の札をかき集めて、柊の方へと返す。
「3が来るなんて、よく予想できましたね。来なければ負ける、という手札で」
柊は机の上の札を巾着に戻し、再び手首に下げた。
「でも、そこが賭けの面白いところですから」
山茶花が目を伏せて微笑んだ途端、ぐううとまたお腹が鳴った。
どうやら茶菓子の糖分はすっかりこのゲーム中に使い果たされたようだ。
「ふふ。賭け金をお支払いします」
小さく笑って、柊は店台に続く戸を開けた。
店台の下にしゃがみこみ、かちゃかちゃと棚の鍵を開ける。そこから何かを取り出したかと思えば、ぽんと山茶花に渡した。
ずっしりと重い。
「……これは……」
「今日店にある全財産です」
「え!?」
驚きで、その風呂敷に包まれた札束を落としてしまいそうになるが、必死で堪えた。
「あの薬草のちょうど二倍のお金かと」
にこ、と柊が柔らかく笑った。山茶花は面食らう。
「全財産を、かけたんですか。見ず知らずの私とのゲームのために」
最初のコメントを投稿しよう!