薬屋

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「僕が五枚、山茶花さんは六枚残った。僕の負けです」  柊がぺこりと頭を下げた。 「ありがとうございました」  山茶花も頭を下げる。 「随分『数国』をやり慣れていますね、その若さで」 「柊さんほどでは、ないです」  たったの一枚差でギリギリ勝てただけだった。  手札が一つ違えば、負けていた。  山茶花は机の上の札をかき集めて、柊の方へと返す。 「3が来るなんて、よく予想できましたね。来なければ負ける、という手札で」  柊は机の上の札を巾着に戻し、再び手首に下げた。 「でも、そこが賭けの面白いところですから」  山茶花が目を伏せて微笑んだ途端、ぐううとまたお腹が鳴った。  どうやら茶菓子の糖分はすっかりこのゲーム中に使い果たされたようだ。 「ふふ。賭け金をお支払いします」  小さく笑って、柊は店台に続く戸を開けた。  店台の下にしゃがみこみ、かちゃかちゃと棚の鍵を開ける。そこから何かを取り出したかと思えば、ぽんと山茶花に渡した。  ずっしりと重い。 「……これは……」 「今日店にある全財産です」 「え!?」  驚きで、その風呂敷に包まれた札束を落としてしまいそうになるが、必死で堪えた。 「あの薬草のちょうど二倍のお金かと」  にこ、と柊が柔らかく笑った。山茶花は面食らう。 「全財産を、かけたんですか。見ず知らずの私とのゲームのために」
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