宇狼

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「いい札が出ましたね」  柊が顎に手を当てて頷く。 「はい。これを5と交換すれば、上段の勝率が上がる——」  山茶花も、じいと宇狼の手札を見つめて答えた。 「同時に宣言を」 「交換だ」「交換する」  役人と宇狼、どちらも交換を選んだ。  そして、交換する札をお互いが出す。  役人は4を、宇狼は7を交換した。  宇狼の7の札を見て、群衆がざわめいた。宇狼の7の札を見た対戦者の役人も、驚きの表情を隠せていない。 「——7を切るなんて」  山茶花は息を飲んだ。 「7は上段では高確率で勝利出来る。しかし宇狼はそれをあえて切ることで、こちらには8以上の数字が4枚以上あると、相手にハッタリをかけたのでしょうね」  柊が驚いていないのをみると、宇狼は普段からハッタリをかけて勝負をすることが多いようだ。 「では、もう一度めくれ」  立会人の号令で、山札から一枚ずつめくられる。これが『送り札』を除いて最後の交換だ。  役人は6をひき、宇狼は——9をひいた。  観衆は息こそ殺しているが、みな宇狼のひいた9を見て安堵したのが、気配で伝わってくる。 「引きが強いんですね、宇狼は」  山茶花も目を丸めた。8と9という強い数字を連続でひくとは。 「ええ。宇狼の場合は運というよりも、野生の勘に近そうですが」  くす、と柊が笑う。  野生の勘でも、運でも、強い札を引き寄せられる宇狼はすごい。山茶花は食い入るように卓を見つめた。 「同時に宣言を」 「交換だ」「交換する」  再び、役人と宇狼のどちらもが交換を選んだ。  役人は引いた6を3と交換し、宇狼は9と5を交換した。
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