宇狼

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「相手は3を出してきましたね」 「ええ。最初に2を交換したことで、下段がかなり強いのかもしれません」  対して宇狼の下段は1、2、3、4。相手の下段が3以下の数字で構成されているとすると、決して勝率は高くない。  しかし宇狼の上段は9、8、8、7となった。——この手札なら、勝てるかもしれない。 「『送り札』は決まったか」  立会人の問いに、役人と宇狼が頷く。  そして、互いの札を交換した。  宇狼は相手に5を送った。そして、宇狼に送られたのは、6。 「——まずい、ですね」  柊のささやきに、山茶花もこくりと頷く。 「『送り札』は必ず埋め込まなくてはいけない。6はどこに置いても、一枚取られてしまう可能性が高くなりますね」  山茶花はじっと宇狼の後ろ姿を見つめる。  6を受け取った宇狼も、少なからず動揺しているようだ。  この6を送って相手の数字を弱くするために、相手は先ほど3を犠牲にしたのかもしれない。 「——あとは、本当に運に頼るしかありませんね」  柊は腹をくくったように呟いた。  宇狼は手札をカタカタと並び替えては、それを見てふうとため息をつく。6が来たことで、並びを決めかねているのだ。 「おい、まだ決まんねえのか? 早いとこ決着つけようぜ、俺たちもお前みたいな貧乏人相手してる暇ねえんだ」  対戦者の役人が、半笑いで宇狼を挑発する。一方の宇狼は手札を見つめたまま、何も言わない。  反応が無いのが気に食わなかったのか、役人はわざとらしく舌打ちをして宇狼をギロリと睨んだ。
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