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「おい、言いたいことがあんなら今のうちに喋っとかねえと、あとは牢屋で死ぬだけだぞ」
低い声で唸った役人に、観衆はじわりと殺気立った。
山茶花も胸がギリ、と痛めつけられるようだった。どうしてこうも、ひどい言葉を投げかけられるのだろう。
公平な勝負の場であるはずなのに。
それでも宇狼は、凛と背筋を伸ばして盤面を見ている。そして、ふうと息を吐いて顔をあげた。
「——決まった」
立会人が頷き、お互いの手札を隠していた衝立が外される。
その場の全員が、食い入るようにその卓を見つめた。
宇狼の上段は、8、7、8、9。対する相手は、9、7、5、9。
どちらも一枚ずつ負け、三枚が残った。ここまでは引き分けだ。おおっ、と群衆から声が歓喜のあがる。
残すは下段の結果のみ。
引き分けでもいい。一枚差でもいい。——勝ってほしい。
役人の下段は、3、1、2、1。
そして宇狼は——3、1、2、6。
一枚差で、宇狼の負けだった。
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