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山茶花は手札を見る。もしも相手が9を二枚持っているうえに、1まで取ってしまったら——八枚のうちの四枚はほぼ負けが確定する。
もしそうなのだとしたら、かなりまずい。
「同時に宣言を」
立会人の号令にハッとした。
集中しなければ。まだ最悪の事態と決まったわけじゃない。
「交換します」「交換だ」
山茶花は5の札と2を交換し、役人は4の札と1を交換した。
これで下段は3、2、2、1。しかし相手に1が二枚あるとすれば、負ける可能性が高い。そして相手が9を二枚持っている場合、上段も同じことだ。
自分の今の手では、勝てないかもしれない——急に背筋がゾッとした。
同時に、艶やかな黒髪の女の顔が、脳裏をよぎった。真っ赤な紅の唇が、弧を描いて妖しく微笑むその顔。
——そうか。私は、この状況を体験したことがあるじゃないか。
勝てないかもしれないという不安感。賭けたものの大きさ。負けた未来を想像してしまう自分。
山茶花はパンと自分の手で頬を叩いた。
群衆がざわめく気配を背後に感じた。
——それでも私は、今ここにいる。
王宮でも離宮でもない、ここに。あの女との勝負に、私は勝ったから。
山茶花は真っ直ぐに目の前の敵を見据えた。
私はこの勝負だって、恐れない。
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