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勝負
公式の『数国』をやるのは久しぶりだ。
卓の上で、山茶花は覚書に署名をした。
この勝負に勝ったら、ここにある全ての金と、宇狼が賭けた目を手に入れる。もちろん宇狼の前科も無かったことにする。
負けたら、ここにある金を失い、自分の体もこの役人に明け渡し、離宮へと送られる。
大きな勝負だ。
覚書を立会人に渡し、山茶花は卓の上の混ぜられた札をじっと見つめた。その奥には、対戦相手である役人が座っている。
さっきの勝負を見た限り、イカサマは無いようだった。札も確かめたが、細工はない。
これは、相手にとっては失うものは無いゲーム。負けても、手に入るものが無くなっただけで、プラスマイナスはゼロ。
さらに公式戦なので、イカサマを仕掛ければ発覚した時には罰金となる。そのリスクを取る必要もないだろう。
つまりこれは、イカサマなしの、本当の勝負だということだ。
山茶花は椅子の上で姿勢をすっと伸ばした。
「では、『数国』を始める。それぞれ九枚の札を取れ」
立会人の号令で、山茶花は山札から九枚の札をとった。
相手の手元が見えないよう、卓の中心に衝立がたてられる。
山茶花は祈るように目元を伏せた。
このゲームは、最初の手札によってほぼ勝敗が決まると言ってもいい。——どうかそれなりの札が来ますように。
山茶花は手元の札を表に返した。
9、8、8、7、7、5、3、2、1。
悪くは無い、しかし必勝できるほど強い手ではない。交換をどれだけ有効活用できるかが勝負の決め手となる。
山茶花は四枚ずつ上段と下段に並べ、7の札を外に出した。
「山札から一枚めくれ」
お互い、山札から一枚めくった。
山茶花は2を引き、役人がひいたのは——1だった。
役人が向かいの椅子でニヤリと笑った。
群衆がざわめく。
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