《松丸雄大視点》

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《松丸雄大視点》

 部屋に戻ったオレは、再び、パソコンのモニターを睨みつけてやる。  教えてやったのに、文句のコメントが多数、寄せられていた。鼻息を荒くしながら、全てのコメントに目を通した。  個人攻撃ばかりだ。腹が立つ。あのオンナも本文を更新していた。コピペして手直しして、2ページ目を書いてやる。  本文を入力だ。 ***(2ページ・本文) 「1ページ目を公開して、異なる筆名で受賞歴があるのか、とか言う、文句が多かった。   特に多かった文句は、オレが、過去に文学賞の受賞歴がないという、分けのわかららんのだ。  文学賞の結果発表後、オレは全力を出し切って作品を書いているんだ。  結果が出たあとは、それまで我慢していたことをしている。バーではしゃいだりだ。  質問に答えてやる!  過去に出版社主催や後援、協賛の文学賞の受賞をしたことは、一切合財ない。  しかし、小説を書くのが、趣味とリアル言えば、「頭良い」と、褒められてうれしいだろう?  過去に存在した某ブログサイト内が、小説サークル主催したコンクールでは、3位になった。  ブログサイトがなくなることになっちまったんだよ。小説サークルの最後が、記念コンサートならぬ、記念コンクールをしたのだ。  オレの作品、サークルメンバーの投票で、3位だったんだよね。  ブログサイトがなくなり、コンクールで3位を、証明する方法は存在しねーよ。  だけど、当時のサークルメンバーの大半が、出版社が主催する文学賞を受賞したり、プロ作家になったりしているんだよ。  だから、オレは小説うめーの!」   *** 『今すぐ公開』をクリックしてやった。  本当のことだぜ。当時所属していた小説サークルの大半は、個人情報を、知らないままだ。  教えてくれないヤツらが多かった。ムカツクぜ。  ただ、筆名は変えない連中が多い。ネットで検索すれば、そいつの作品がオンライン書店で、売っていたりする。  個人が特定されることを書き込んだら、ブログサイトの運営が処分してくる。文学賞を取ったのことがないのは、オレくらいだろうな。つまりオレは受賞者の近似的(きんじちてき)存在様(んざいさま)なの。 ***   翌日の朝、目が覚めた。睡眠で疲れ取れたが、怒りは残ってやがる。  通勤電車に乗る。車内で、『短い期間で文学賞を取る方法を教えてやる』をスマホで見た。  小説投稿サイトで、エッセイ、カテゴリーでランキング上位だ。まあ、当然だろうな。  電車内で椅子に座るオレに、立っているヤツから、声がかかった。絶対席は譲らんぞ。ぐいっと顔を上げた。 「おはようございます。松丸雄大さんですか?」  見知らぬ若い女が、近寄り、挨拶をしてくる。 「おはようござます。オレ、阪丸っす」  その瞬間、乗客に紛れていた数人の男に、オレは取り押さえられた。手錠をはめられる。刑事たちだ!  逮捕礼状を鼻先に突きつけられる。 「阪丸六郎、詐欺容疑で逮捕する」  近くの席に座っていた連中は、血相を変えて、隣の車両に移動した。スマホでオレを撮影してる野次馬に叫ぶ! 「おい、おめぇ、(つら)覚えたからな。刑務所出所して電車内で見かけたら……」 「やめろ!」   刑事がオレの言葉を制止した。オレは次の駅で降ろされた。駅前に止まっていたパトカーで警察署に連行だ。  結婚詐欺だってよ。被害届けを出されたか。 「彼女と僕の問題ですよ。お金を借りて、まだ返済してないだけっす。彼女の勘違いです」
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