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今日も彼女は座っていた。
窓際の角の席は彼女の定位置だ。
そして僕はその席の斜め向かいに座る。
ここは、僕の定位置だ。
「お待たせしました。ご注文をお伺いします」
店員が傍にやってきた。
僕の傍ではなく、彼女の傍にだ。
彼女はメニュー表も開かずに答えた。
「チョコレートパフェをお願いします」
「はい。かしこまりました」
活気のある店員とは対照的に、僕は身体を強張らせていた。
その理由は彼女が ”パフェ” を注文したからだ。
彼女がパフェを注文することは、僕にとってここ半年間のプチミステリーになっている。
彼女がパフェを頼むのは週に一度だけ、それも不定期であり、一体どんな基準でパフェを注文しているのかが全く分からない。
気まぐれで注文しているのだろうと言われればそれまでだが、僕にはどうも気まぐれだとは思えなかった。
なぜなら、彼女は凄く几帳面な性格に違いないからだ。
毎日決まった時間にカフェに訪れて、テーブルの上に筆箱、ノート、スマートフォンを綺麗に整列させるのだ。
店員に対する言葉遣いはとても丁寧で育ちの良さが伺える。
輪郭は緩やかなカーブを描いており、決して華奢な体系ではないが、暴飲暴食をするほど脂肪を蓄えているとも思えない。
そんな彼女が週に一度だけ、パフェを注文する。
その理由が僕にはどうしても分からなかった。
そして正直なところは、僕は彼女のことをもっと知りたい、ということになるのだろう。
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