その日私はあなたに出会った

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新しい制服、新しい学校、初めて見る道や家。 ただ無気力に、ただ流されるまま生きてきた私にとって、その彼の姿は革命___いや、そんな言葉では表せない程の衝撃を受けた。 儚げに木に身を寄せる姿、彼を受け入れるかのように、祝福するかのように散る花びら。その全てが、今も私を焦がしてやまない。鮮明に、ただ美しく脳裏に焼き付いている。 生まれて初めての気持ちに最初は戸惑ったが、外の声に耳を傾けてみるとそりゃあまあ彼は馬鹿みたいにモテていた。納得はできる。容姿は整っているし、成績も大変よろしい(らしい)。風の噂程度でこれなのだから、まだ誰も知らないであろうあの光景を見たのはラッキーだったのかもしれない。神が私に告げていたのかもしれない。 私はまず、あの美しさを残す事にした。今まで触れてすらいなかった写真や絵に没頭し、そしてその全てが失敗に終わった。……今まで触れてすらいなかったのだ。やる気があった所であの美しさを表現できるはずがない。写真なんて以ての外、被写体がいないのにどうしろと言うのだろう?だから私は考えた。悩み、悩み、悩んで、ひとつの結論に至った。 ___そう、なら彼と接触すればいい。 正直、私のような存在が雲の上の存在である彼に接触するだけで多大な犠牲を払うだろう。友情だとか、信頼だとか。でもそれで会えるのならば安いものだ。彼は私に世界の美しさを教えてくれたのだから。 今の私は、彼によって成り立っているのだから。
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