こんにちは。わたし、リカちゃん。

3/9
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 智ちゃんは幼稚園児。幼稚園の年中さん。  今日はもう冬休み。朝ご飯もそこそこに、物語が始まる。私は勿論その主役。朝になり、ベッドから起きて、お着換えをして、靴を履き、お出掛けする。どこへ行くのかな? 学校。そう、私は小学生。小学校へ行くの。椅子に座って、授業を受けるの。お友達はミニカー。智ちゃんの弟、カズ君のミニカー。「他にお友達がいないの。ごめんね。仲良くしてね」智ちゃんが言う。優しい子。ほんとうに優しい子。  それから。  智ちゃんのお誕生日が来て、そして次のクリスマスが巡って来た。私の衣装は2着になった。真っ白なウェディングドレスと、ピンクのロングワンピース。それから、ランドセル。あとそれから、家も。リカちゃんハウス。私の家。お友達も増えた。バービー人形ちゃん。外人。  「うるさい。さわぐな。おとなしくしろ」カズ君がドスを効かせた声で言う。私は誘拐されて、悪い人の家(リカちゃんハウス)に監禁されてしまった。監禁してる悪い人はバービー人形ちゃんだ。その役をやるのがカズ君。  「た、たすけてください」私は悪い人に縛られている。「おねがい、たすけて」リカちゃん役は智ちゃん。真に迫る演技。「身代金を要求した、って言うのよ」智ちゃんがカズ君に小声で指示する。「みのしろきん?てなに?」カズ君、不思議そうな顔。「お金よ、お金」「あ、そっか」納得したカズ君、低い声を作る。「お金、もってこい」「無理よ。お金なんてないわ」「じゃいいよ」「いいよじゃなくて。お金もってこなきゃころす、って言うの」「えー、ひどいじゃん」「いいのいいの。言って」「お金ないところす」「たすけてー」「どわわわーん」智ちゃんの効果音と共に現れるのは鉄人28号。ブリキの鉄人。今年のカズ君のクリスマスプレゼント。「あそれぼくの」「カズ君はバービーちゃんやって。悪役なの」「えー」 正義の鉄人、リカちゃんハウスの壁の間から登場。「あっ鉄人!」鉄人は無言で私を助ける。私を背負い、空を飛ぶ。頼りがいのあるブリキの背中。「びゅーん」飛んでいく。くやしがるバービー。「鉄人、ありがとう」物語は大団円。大団円。  この頃の私は、すっかりか弱い助けられ役になっていた。智ちゃんはヒーローが活躍するSFサスペンス物語が得意だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!