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朝。寒い朝。
わぁ。
歓声。
ごそごそ。音がして、包装紙が破られる。箱が開けられる。
こんにちは。あ、おはようかな。わたしリカちゃん。
私を手にした女の子。目が輝いてる。すごく輝いてる。よっぽど欲しかったんだな。流行ってるもんね。身体の周りのビニールが剥がされる。じっと見られる。じーっと。頭からつま先まで。ガン見。おかっぱ頭。ヘクション。くしゃみ。寒いの忘れてる。寝巻き。靴下履いてない。もじもじ。おしっこ行くのも忘れてる。
「智ちゃん、おしっこ行っておいで」お母さんが言う。お母さんもにこにこ。すごくにこにこ。「うん」ともちゃんはどうするか迷って、私を布団の上に寝かせてトイレへ行くことにした。丁寧に寝かされる私。掛け布団も掛けて。トイレへ走っていく智ちゃん。おしっこ漏れそうだったんだ。かわいい。長谷川智子ちゃん。
私が初めて長谷川家に来た朝。クリスマスの朝。
「サンタさんにありがとうって言おっか」戻ってきた智ちゃんに、お母さんが言う。「うん」智ちゃんは元気にそう言って、手を合わせる。サンタさんにお礼してるんだ。かわいい。
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