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短編
「リーザベルト様・・・・・・。顔を上げて」
「いや、無理。無理だから・・・・・・」
顔を背けようとしたところを指で上げられて、シンの唇がそっと押し付けられた。強引なくらいなのに、シンらしいというか優しく丁寧だ。
「あ・・・・・・ちょっと待って」
手で押しとどめようとすると、悲し気にシンの顔が歪む。
「やっぱり――、やっぱりリーザベルト様は、獣人なんかは相手にしてくれないんですね。あの時、僕を求めてくれたのは、間違いだったんだ・・・・・・」
そうだと頷くべきだと頭の隅で理性が騒ぎ出す。頭を一回振ればいい。そうすれば、この美しい猫は諦めるだろうと、思った。
自分はもう随分と前から大人で、やっと成人(猫)となったシンとは違うのだから。
前回は、色々と・・・・・・そう、色々とあったのだ。それに命の危険もあったから、だから・・・・・・シンの願いを断れなかったのだ。
俺は魔法使いで、人間で、シンとは番にはなれない。だって、男同士だし。
「そうだ・・・・・・この前のは」
間違いだと言おうとしたところを口を封じられた。
「んっ、リーザベルト様、言わせない――。もう僕は、あなたが嫌だといっても――」
寝台に身体を押し付けられて、覆いかぶさってきたシンに俺は驚いた。俺の腹の上に乗り、両手を上で一纏めにしたシンの力の強さと、彼の意志に。
俺が嫌がれば、止めてくれると、何故かそう思っていた。
「シン、あっ止め――、止めて・・・・・・」
猫特有のザラザラとした舌が俺の口の中を舐めて回る。猫の舌というのは、ザリザリしている。凄く痛いわけじゃないが、むず痒いというかムズ痛い。背中も首も何故かゾワゾワして・・・・・・、腰に熱を持ってしまった。
「リーザベルト様、僕の口付けで感じてくれたんですね」
ふわっと微笑む笑顔の爽やかさと声のエロさに、俺は口を噤む。顔を背けると、「もうリーザベルト様のいいところは、知っているから大丈夫ですよ」と首筋を何度も舐められる。
「うっ、ううっ――ん」
それはいいところじゃなくて、弱いところなのに、シンは俺の我慢している声に段々と興奮してきたようだった。息が荒い。
「ここに牙を突き立てるんです。少し痛いですけど、大丈夫です。繋がっている間に噛むので、多分気にならないと思います」
繋がる・・・・・・。俺の脳裏に、半月くらい前の情事が思い浮かぶ。シンの息遣いや腰の推しの強さに、意識は何度もとんだ。確かに気になる余裕などないだろう。
「違う――、まて、シン。お前の番はどこかにいるはずだ。俺は人間だし、男だ」
やることやっといてなんだが、あの時とは違うのだから、そこは許して欲しい。それにシンには、俺の財産をすべて使ってでも可愛いお嫁さんを探し出してやるつもりなのだ。
そう言ったら、「可愛いお嫁さんはもういるので、結構です」と顔を撫でられながら拒否された。
まさか、俺が可愛いお嫁さん――?
「子供だって欲しいだろう――。お前は家族を欲しがっていたはずだ」
「子供は救護院に沢山います。家族はあなただけいればいい――。それにあなたのお子さんたちがいるじゃないですか」
国の政策によって、俺には二人の子供がいる。十四の時に、女に乗られて、種をつけただけの子供だが・・・・・・。二人の息子はほとんど会うこともない俺をとても慕ってくれている。だが、息子達はシンよりも年上なのだが。
救護院は、親のいなくなった獣人の子供達が成人まで面倒を見てもらえる場所で、シンもそこから派遣されて俺の元に来たのだった。
「でもシン・・・・・・。私は、もう三十五歳だし・・・・・・」
この先、可愛い女の子と歩いているだけのシンを見ても嫉妬してしまうのは目に見えている。俺には似合わなかったと、いつか後悔するだろう。このしなやかな獣は、狩りつくされるほどに美しい種族で、シンは性格だっていいのだから。
引きこもりの対人恐怖症といってもおかしくない、真っ白な身体の、こんなおじさんの元に置いていたのが間違いだったのかもしれない。
頭は色んなことを考えているのに、シンは「あなたとの年の差が縮まらないのが悔しい――」と苦しそうな声を出すから胸元まで辿って来たシンの舌に身体が跳ねる。
「んんっ! シン、駄目だ――。この前のは、俺が薬でおかしくなっていたから・・・・・・。君とこんな風になるつもりなんてなかった!」
嘘ではない。可愛い子猫の頃から知っているのだ、どうこうしたいともどうされたいとも思ったことはない。
「ごめんなさい――。リーザベルト様、僕はずっとこうなることを願っていた」
殊勝な声の割に瞳には情欲という灯が燃え、せわしなく動く手には熱が籠っている。
「あ・・・はっ! うう・・・・・・」
シンはそれほど大柄ではない。なのに、振りほどけず、胸の先に舌を伸ばされると、もう辛くて、辛くて仕方がなかった。
「リーザベルト様の胸は、ほら尖っています。ちょっと震えている? 可愛い――」
身体に力が入らず、胸の尖りに空気ですら感じるくらいに敏感にされて、悶えているうちに裸になっていた・・・・・・。
「シン、そんな変態みたいな・・・・・・」
いや多分変態だ。三十五歳の種族の違う、しかも同性にこんな愛しそうな顔をしている時点でかなり変態だろう。
「リーザベルト様の身体は美味しい。ここも――。苦しそうにしたますよ」
「や、やだから! ひっ!」
俺の中央にある男に手を伸ばし、顔を近づけるシンに悲鳴のような声で逃げをうつ。全身の力でシンを拒否したつもりだったが、もはや力がでなかった。ただ、俺がどれだけ嫌かは、シンもわかったようだった。
嫌とかいうより恐怖に近い。
子供だった頃に女にされたことがトラウマになっている。人間に会うのが極端に恐ろしくなり、カウンセリングすら受けていなかったから、仕方がないのかもしれないが。
「リーザベルト様、ごめんなさい、震えないで――」
前回はそんな前戯に時間なんてかける暇はなかったから、そこに口をつけることはされなかったのだと気付く。
「シン、君はもう大人だから・・・・・・もう俺の元から離れるべきだ」
「リーザベルト様、僕を捨てるんですか?」
自嘲気味に笑おうとして失敗したシンの顔に手を伸ばす。
「君は学校で主席だったんじゃないか、政治でもいいし、商業でもいい。もうお手伝いさんは・・・・・・俺には必要がないんだ」
「どうして――?」
九歳の時に家にお手伝いさんとしてやってきたシンを思い出す。小さな黒猫は、玄関で蹲っていた。
「息子たちが魔力飴の製造を手伝ってくれると言っている」
これは本当のことだ。俺の仕事は、魔力飴という獣人が人間と同じ形態をとるために必要な力を飴に注ぐことだった。強大な力は、どれほど注いでも枯れることはない。
突然息子達(双子)が俺の仕事を手伝いたいと言い出したのだ。
「それは知ってます――。僕ではその仕事は手伝えないから・・・・・・。でもそれは!」
獣人はどれほど魔力が多くても他人に与えられるほどはないからだ。
「もうお手伝いさんはいらないんだよ、シン。君はここから出て行きなさい」
蒼褪めているのに必死で取り繕う。大人の顔をして、俺はシンを見つめた。黒い髪は短く、すっきりとした好青年そのものだ。しなやかな身体は、鍛えているのか筋肉質で、俺の身体とは違いすぎた。これが人間と獣人の差なのかただの個体差なのか、俺にはよくわからない。
シーツを引き寄せ毅然と拒否することが出来た、と思った。
「でも・・・・・・リーザベルト様、泣いてます。そんな顔をして、どうして僕を拒否するんですか? リーザベルト様、ごめんなさい。学校だって入れてもらったのに、僕は、あなたなしに生きていけない――」
猫のような仕草で、猫なんだから当然だが、俺の頬に頬を寄せてくる。ついつい顔に手を伸ばすと、顔を押し付けてくる。
ハッと気づいたら、シンの下で全身を擦りつけられていました。
「僕の匂い、嫌いじゃないですよね」
顔が近づくと、俺の癖で、陽の光で干したタオルのようなシンの香を嗅いでしまう。
え、別に変態じゃないよ! 多分・・・・・・。
青から赤に変化した俺の頬にもう一度唇を寄せてくるシンだが、色々と色々とヤバいくらいに滾っている。
「僕ね、リーザベルト様に自分の匂いを沢山つけたかった――」
「シン、同じシャンプーの匂いじゃないか」
「うん、今まではそれで我慢してた」
同じ匂いは、家族の証だとシンは思っているようだった。
「本当は舐めてほぐして上げたかったんだけど、リーザベルト様、感度よすぎるから今日は諦めます」
シンの力は中々素晴らしいものがあると思う。私を抱き上げて寝台の縁に座りお互いのモノを腹の間で擦れるくらいに寄せて、私の尻に手を掛けた。
「なっ、まって――ああ――!」
私の尻の穴にシンの指が入り込んでくる。何か油のようなものをつけているようで、一度開かれたことのある器官はそれほど拒否を見せなかった。
「リーザベルト様、中温かい――」
「う、やぁ――! うう、う、ん・・・・・・」
右や左に身体を捻っても俺のモノが擦れて気持ちよかったり、変なところに指が当たったりして快感が突き抜けた。
息子達の母である女に薬を盛られて、それを緩和させるためにシンに抱かれたあの時に、俺の身体は開かれていた。気持ち悪いという嫌悪感よりもその先にある快感を身体は知っているのだ。
「気持ちいい――」
俺じゃない、俺の心の声じゃない、シンの声は、俺を戸惑わす。
シンはまだ気持ちいいことなんてしていないはずなのに。俺と抱き合っているだけで、気持ちいいと言うのだ。泣きそうな声で――。
「口開けてください。後、魔力吸って猫に戻したら、猫のままやりますからね」
「そんな――」
俺の最後の切り札は、口付けの時に魔力を奪うことだ。そうすれば、逃げられると思ったのだが。
「俺、結構大きい猫なんです。人間くらいありますから、リーザベルト様を抱くのに問題はないです。でも爪が当たったりしたら、多分大けがになっちゃうので、出来れば人型のほうがいいかなと思うんです」
そう言えば、小さな時に見たきりシンの獣の姿は見たことがなかった。
「ただでさえ子供だと思われているのに、獣の形なんかなったら、リーザベルト様の恋愛対象外になるかなと思って」
切ないくらいに真面目にそう告げるシンの頭から耳が出た。いや、耳だったところじゃない頭の上のほうに黒い三角の・・・・・・やっぱり耳だ。猫の耳。
「リーザベルト様の声聞いてたら、ムズムズしちゃって・・・・・・。耳と尻尾が・・・・・・」
魔力飴の効果はあるはずなのに、耳と尻尾はでるらしい。そんなことは知らなかったので、ちょっと驚いた。
「あっ! 待って――、なんで・・・・・・!」
「折角すから、使わないともったいないかなと思って」
俺に口付けて、指は俺の尻を解しながら、俺のモノは・・・・・・尻尾がサワサワと撫でたり先っぽをグリグリしたり・・・・・・。まるで指の様に器用に動き始めた。
「んん・・・んっ・・・・・・。はっ・・・ううん――」
口付けが深くて呼吸もままならないまま、俺の口からもう拒否の言葉は出なかった。
だって最終手段使ったら、猫で抱かれるんだぞ、まだ人型のほうがマシのような気がするじゃないか。
「リーザベルト様、もう、ごめんなさい、我慢できな・・・・・・」
「ああああぁぁぁ――」
持ち上げられて、ゆっくりとシンのがガチガチになったモノを銜えこむように降ろされる。
「やっ! なんで、こんな――」
不安定で掴まることが出来るのは、シンの頭しかない。必死にしがみ付くと、シンが笑った。
「だって、抱き着いてくれるでしょ――。大丈夫、リーザベルト様がどんなに暴れても落としたりしません」
先の大きなところが、苦しい。前回は訳のわからないまま抱かれたものだから、その感触に怯えが過る。
こんな大きなものが入るわけない――。俺の○ン○はこんな太くない――。
需要と供給、剣と鞘、どれも互いに見合ったものだろうに、俺達の関係は、歪だ。
「怖い――」
まだ先端しか入っていないというか、もしかしたら入っていないのかもしれないそれが俺の穴をグリグリと押しつけたり入り込もうとしたりしている。先走りらしきものがクチュクチュと鳴って、恥ずかしいくらいだ。
「リーザベルト様、力を抜かないと挿いれませんよ」
尻を掴む手の上に太ももが乗っていてシンの肩に足が乗っている状態なのだ。両手は何とかシンの頭を抱え込んでいるが、不安感が極まりない。
「挿れなくていい――っ!」
本気の本気で言ったのに、シンは困ったように溜息を吐いた。
「この体勢のほうが酷くならないと思ったんですけど・・・・・・リーザベルト様が、お嫌だと言ったんですよ」
「体勢じゃなない――! 行為が嫌なんだ――」
俺は十四歳であのくそ婆に乗られてから、一度だって他の人間とこういう行為をしたことがなかった。それで生きていくのに問題はなかったのに。
「でもこうしないと、リーザベルト様は、僕のものにはなってくれないでしょう」
「やってもならない――」
あーあ、とシンは声を出した。その声は、いつもシンとは違っていて、底冷えのするような、それだけは言ってはならなかったと後悔させられそうな感じの抑揚だった。
「リーザベルト様、それは言ったらだめだったのに――」
私が思った通りのことをシンが言う。珍しく怒っているのはわかった。何故怒られないといけないのかそれだけがわからないが。
私を寝台にポイと投げたのは、解放してくれたからだと思いたかった。けれど、その瞳は、獣を狩る肉食獣のようなものになっていた。
芯から肝が冷えるとはこういうことかと、俺は威圧で動けなくなったまま手の横にあった枕を取り上げた。
「投げますか?」
投げた瞬間に取り上げられそうな、引き裂かれそうな気配を漂わせて、シンは訊ねる。
ポンと横に置いて枕をして寝そべると、シンは戸惑ったように目を瞬かせた。
自分で足を抱えて穴を見せつけるように開いてやった。おっさんの悩殺シーンに頬を紅潮させて嬉しそうに間に入ってくるのを、冷めた気分で見上げていると、更にでかくなったんじゃないですか、人型ですか本当に? 君は馬の獣人じゃないよねというくらいに滾らせて、シンは先端を擦りつけてくる。かなり解されていたようで、さっきのように力を入れなければ挿りそうな感じだった。
「・・・・・・君もあの女と同じだ――。俺の意志なんか必要ないんだろう」
歌うように囀れば、ハァハァと涎を垂らさんばかりに俺に挿れようとしていたシンが石のように固まった。
「リーザ・・・ベルト・・・・・・様?」
「挿れたきゃ挿れればいい――。番たきゃ好きにすればいい。どんなに嫌だと言っても俺に突っ込んで腰を振るつもりなんだろう。それで俺が『気持ちよくなればそれで合意』だというんだろう? あのクソ女とどこが違うんだ?」
自分が引き裂いて殺そうとした相手と同じだと言われて、シンはショックで動けなくなった。酷い言葉だとわかっている。
「あなたは頭がいい――。僕が一番恐れていた言葉をこの瞬間に使うなんて――。わかっています、僕が最低の獣だということは。でも僕は知っている、あなたという人間をわかっている。だから、あなたが僕のことを想って僕を引き裂くような言葉を使ったってことも気付いてしまった。申訳ありませんが、それで怯むくらいなら一生あなたのお手伝いさんとしてだけ側で生きていくと決めますよ。もうあなた以外には、番うことが出来ないくらいに・・・・・・愛しているんです」
九年の時間は伊達じゃない、しかも向こうは成長期だった、いつまでも子供でいてくれるわけはない。
精一杯の演技も見抜かれたら、こちらには成すすべもない・・・・・・。
「馬鹿猫・・・・・・」
白旗を上げてそういうと、シンは泣き笑いのような顔で俺の頬を舐めた。
あれ、そういえば人型なのに何故舌がざらついているんだろうと思う。
耳がピクピクと動いているのを見て、これと一緒かと気付いた。性的なものか興奮の度合いによるのだろう、一部獣化してしまうのは。一度ちゃんと検証しようと思うとシンが喰いついてきた。
「今全然違うことを考えているでしょう」
「いや、シンのことを考えていた」
嘘ではないのが伝わったのだろう、顔が少し赤い。
「ごめんなさい、今少し元気がないから、今のうちに挿れますね」
馬並み、ではなくなったが、それでも十分ではないだろうか。
俺に口付けしながらそういうと、枕を取り上げられた。
「本当は後ろからのほうがいいんですけど、多分理性が飛んじゃうので、前からにしますね」
理性は残しておいてほしい、是非に是非に――。
「腰を上げて・・・・・・」
シンは、俺の尻を持ち上げ腰の下に枕を入れた。
「シン・・・・・・」
「そんな不安そうな声を出さないでください・・・・・・」
オッサンの弱気な声など聞きたくなかったか・・・・・・と思ったが違ったようだ。
「離せなくなる――」
俺の片膝を抱え、シンは自分の肩に乗せた。
「無理! 無理! 物理的に無理だ! 骨が折れる」
「まさか・・・・・・」
クイクイと俺の膝を押して、その硬さにシンは驚愕している。
「猫と、若者と一緒にすんな――!」
フフッと笑って(笑いごとじゃない!)シンは俺の両膝を自分の肩に乗せた。腰をシンの膝の上に乗せられて、これなら何とかなるかと息を吐いたところを、シンは俺に隙を与えず、自分のソレを押し込んだ。
「うわっ――っ! ぐっ! ううっあ、あ、んあっ」
意味をなさない言葉の羅列は、俺の恐慌の証だった。
「唇を噛みしめないで・・・・・・」
唇を舐められて、ハッと息を吐いたところを更に・・・・・・。
「うぎゅ――!」
もう嫌だ、息を吐きたくない。吐いたら苦しいものが入ってくる。
「リーザベルト様の耳・・・・・・美味しそうだ」
自分も苦しいだろうに、シンは喜びに溢れた顔で俺の耳を噛んだ。
「あっ!」
自分でもわかるくらいに声が跳ねた。
「耳が好きなのは知ってましたが――」
「あ、やっ! 止めろ――! はっ、はっ!」
いつの間にかシンのモノは俺の中に納まっていた。ドクドクと脈打つのは、俺の心臓の音なのか、シンのソレなのか。
俺が苦しそうにしているからか、シンは中でジッと待ってくれていた。
「愛してます――」
耳元で囁かれる言葉に眩暈がした。
「やぁ・・・・・・! 耳元で喋るな――」
言葉も振動も俺を揺さぶるのに十分だった。
「あっ・・・・・・」
シンが声を上げて少し恥ずかしそうに笑う。
「ああっ! もう・・・いいから動け――」
串刺しにされながら、シンの声に何故か欲情した。
「はい――」
僅かに押し付けらえたソレがゆっくりと俺の粘膜を刺激しながら引かれる。
「ふっ・・・・・・うぅ・・・」
俺の孔を広げるのが目的のようにシンはゆっくりと腰を回すように動いた。そしてそれを押し込める。
「ああっ! あ、う・・・んぅ――」
やはり痛い・・・・・・。愛がなかったら我慢などせず、魔法で切り刻んでやりたいくらいに痛い。
「今物騒なこと考えてませんでしたか?」
シンはいつも俺の考えていることを読めるのではないかと思う。猫ってそんな能力があったんだろうか。
汗が俺の腹に落ちるのにすら、敏感に感じてしまう。
おかしい・・・・・・おかしい、こんなのはおかしい――。
「変になる――、あっ・・・、奥、いや――」
「どうして――? 奥は嫌なんですか?」
わかっているだろうに、シンは俺の心が読めるんだろう? と、目を見つめた。
「いやらしい身体ですね。入り口はギチギチで、痛みで硬直しているのに、奥は気持ちいいんですか?」
ゆっくりと奥を突きながら、俺の入り口を指でなぞる。
「ああ――っ!」
「いいですよ、あなたになら殺されてもいいです」
「いやだ――、いや・・・・・・、シンが死んだら・・・・・・」
寂しい・・・・・・、と言ったような気がする。言葉にならなかったかもしれない。シンが突然暴発してしまって、瞬間俺の意識が焼ききれたように、飛んだ。
「そんな殺し文句を言うから・・・・・・」
残念そうな嬉しそうなそんな声を聞いたような気が・・・・・・した。
リーザベルト様の頬を撫でた。僕は猫だから、撫でられるのも好きだが、リーザベルト様のことは撫でるのも好きだ。
少しだけ残念なことがあった。やっと想い叶って彼の身体を抱いたというのに、リーザベルト様が「シンが死んだら、寂しい」とか言うから、未熟な僕はあっという間にリーザベルト様の中に精液を流し込んでしまった。まだ、本調子でなかったリーザベルト様は、意識を失ってしまったのだ。規則正しい呼吸が、彼がただ意識を飛ばしただけだということを教えてくれたが、念願の番となる儀式が出来なかった。
リーザベルト様の首筋に僕の牙を突き立て、印をつけることが出来なかったのだ。
不甲斐なさに泣きそうになる。
人獣達の王と言ってもこんなものだ。
リーザベルト様は、僕の母を探してくれていた。小さな時は、母が何故いなくなったのか、わからなかった。
「言えなくて、ごめんなさい――」
人間の魔法使いが、獣人を作ったのは、人間の数が減りすぎて、寂しかったからだ。その時、魔法使いの一番側にいて最初の獣人になったのが猫だった。
リーザベルト様は、猫が狩られたのは美しいからだと思っている。実際、少なくなった人間の愛玩として、性の奴隷とされた獣人は数限りないと言われている。だが、猫が狩られたのは猫が他の獣人を操る能力を持っていたからだった。最初に猫を獣人にした魔法使いは、獣人をまとめるように自分の猫に命じたからだ。
母は、獣人の女王となる時、僕を連れてはいかなかった。今は秘密を知る獣人に匿われているはずだ。僕はそれを覚えていなかった。けれど、何度か猫の姿になったとき、周りの獣人の様子がおかしくなって、少しずつ理解していった。
だが、獣人の王は、魔法使いの王の前では力を使うことが出来ない。
つまりリーザベルト様が魔法使いの王だということだ。
「あなたと僕が出会ったのは、やはり運命だったんです」
うっとりと、自分の番に口付ける。甘くて美味しそうないい匂いがする。
この匂いを嗅ぐと精を放って力を無くしていた自分自身が力強く脈打っていく。
「リーザベルト様、起きてください。僕のものにされる瞬間を見逃さないでください」
グリッと中をかき混ぜるように動かせば、ピクリと瞼が動いた。
ごめんなさい、リーザベルト様、発情の始まった猫は、しばらく止まることが出来なんです。そう言うと、リーザベルト様は、驚きに引き攣って泣きそうな顔で「死ぬ・・・・・・」と呟いた。
大丈夫、お風呂もご飯もトイレも僕がお世話をしてあげるから、安心して抱きつぶされてください。
何ていったって、僕はリーザベルト様の『お手伝いさん』だから――。
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