263人が本棚に入れています
本棚に追加
雨はまだ降り続いている。
ここは多分家の上空だ。服に、髪の毛に雨のしずくがまとわりついていく。
それよりも、今自分と彦三郎が空中に浮かんでいるという事実に驚く。
意味不明な生き物を沢山新年会で見て、彦三郎が人間じゃないってちゃんと分かっていた筈なのにいざこうやって超自然現象にあうとどうしたらいいのか分からなくなる。
「まずは医者、だよな」
彦三郎が言う。
「ちょっと、まて。待ってくれ」
俺が思わず言うと彦三郎はこちらを見た。
茶色い飴玉みたいな目は、先ほどまでとあまり変わらないなと今の状況とあまり関係ない事を考えてしまう。
彦三郎のあまりの変貌ぶりも、それから彼が家の外にいるという事実もとんでもない事だとは思うのだけれど、彦三郎が彦三郎なことに安心してしまう。
「……ああ、もう少しで雨やむなこりゃ」
彦三郎は鼻をすんと鳴らしたあと言う。
それからあたりを見回して、少し離れたところにある神社まで、ふわりふわりと飛んで行った。
りんご飴を買った神社は土砂降りの雨で誰もいない。
石段に降りると、思わず自分の体をぱんぱんとさわって変化がないか確認してしまう。
変わったのは多分彦三郎だけだ。
「で、結局どういうことなんだよ」
「ん? あー、多分だけどな……」
最初のコメントを投稿しよう!