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「でもまだっ!!」  俺が叫ぶと彦三郎は冷静に言った。 「最悪、玄関の結界さえ解けば無理矢理逃げられる」  そんなことは初めて聞いた。 「玄関だな!!」  あそこはドアの上に一枚、反対側にも一枚、柱に一枚、下駄箱の上にも何かよく分からない箱に、大量の札が貼らせていた。  急いでその札を燃やして剥いでから、箱は一瞬悩んで外に放り投げようと思った。 「馬鹿!!」  彦三郎が叫ぶ。これを敷地外に出してしまえばいいんじゃないのか?  彦三郎は何を知っているのだろう。音が先ほどより大きくなった。    家鳴りが聞こえる。  家がきしむ音だ。  まずいと思った。彦三郎の方が年上で彼は人間では無くて今俺の手の皮を少し食べた事はもう頭に無かった。  何かを叫んでいる彦三郎に覆いかぶさる。  あの時と一緒だ。  彦三郎が死ぬときと。  また、同じ経験はさせたくなかった。守ってやりたかった。
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