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1-4
この子は本当に人じゃないという事なのだろうか。
ここまで手の込んだいたずら、というのも一瞬考えたがそれを否定する。
普通こんな小さな子を使って火花が飛び散る様ないたずらは、普通の親は許さない。
当たり前の事だ。
新興宗教を信じさせるためのだとしたら最悪だとは思うけれど、これで俺は教義の何かを知って畏怖するのかというと、そうでもない。
であれば、少なくともこの子供の自称通り、座敷童の様な何かなのだろう。
「やっと分かってくれたかい?
門脇の人間は物覚えがよくて助かる」
座敷童はそう言うと元居た部屋に戻っていく。
* * *
親戚は俺と座敷童が部屋に戻ると居心地が悪そうに部屋にいた。
けれど、すぐに一人で帰ってしまった。
部屋には俺と子供の二人きりだ。
「で、俺は世話って何をすれば……」
「適当に飯と、後は話し相手あたりか?」
座敷童はそう言うが、本人もそれほど何か希望があるようには思えなかった。
「そもそも、別に飯なんか食わなくても死にやしねーんだ。
化け物は便利だろ?」
そう座敷童は笑う。
「他の、なんだっけ? 質問ってやつはあるかい?」
座敷童がいうが、ほとんど何も思いつかなかった。
けれど一つだけ気になっていることがある。
「あんた、名前は?」
きょとんと座敷童がこちらをみた。
妖怪に名前を聞くのは駄目だったのだろうか。それとも妖怪には名前が無いのだろうか。
謝った方がいいかと思った。
「……彦三郎」
静かに座敷童が言う。
それが彼の名なのだろう。
「彦三郎さん。よろしくお願いします」
「おう」
大の大人が子供相手に頭を下げる姿は滑稽に思えたけれど、考えるのを辞めた
「さて、さっそくなんだけどな」
彦三郎が再び口を開いた。
「……ここの部屋の掃除頼んだからな」
食事と話相手だけじゃなかったのかよという突っ込みは飲み込んで、分かりましたと答えた。
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