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「家にいる事“だけ”が重要らしい」
ニヤリと彦三郎は笑った。
それは子供らしからぬ笑顔だった。けれど、彼の話しが本当だとするともう彼は子供ではないのか?
それとも妖怪の世界では二百歳はまだ子供なのだろうか。
「だから、立派なNEET様として二百年ここで暮らしてる」
自嘲なのだろうか、それとも俺に対する嫌味なのだろうか。
そこが分からない。
「ずっとこの家の中で……?」
「俺が、座敷童になった時からはずっとここにいるな」
さっき見た通り門脇には札で外に出ることを封じられてるからな。
彦三郎は言う。
「別にあれが無ければ、俺にとって壁なんてもんは関係ないんだ」
アイスを食べ終わった彦三郎は立ち上がると、障子へ向かって歩く。
そのまま障子をすり抜けた彦三郎を見て、ひゅっという音が自分の喉の奥から聞こえる。
嘘だと思ってしまいたい気持ちが消え去って、どうにもならない生き物との同居生活だという事実だけが残る。
「大丈夫だ。
俺にできることっていやあ、お供えもんを食う事と憑いた家に繁栄をもたらすこと位しかない」
そもそも、アンタ門脇の人間なんだろ? 危害をくわえることなんざできやしない。
俺がアンタに与えられるものは繁栄だけだ。
はっきりとした口調で彦三郎は言った。
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