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樹里 side 「やばっ、遅れちゃうかな?余裕を持って出たはずなんだけど」  そんなことを言いながら、僕は走る。校舎、もしくは校門がもうそろそろ見えてこないと遅刻なんだけどなぁ。 「あっ、あれが学園の校舎かな?すっごいおっきくて綺麗!」  僕は、校舎が見えてきたことで安心し、走る足を緩め、歩く。このままなら歩いても遅刻はしないと思ったからだ。すると、 「校門に、誰か…いる?」  学園の制服のような白のブレザーを着ている、黒い髪の男の人が見える。友達になって一緒に校舎まで歩いていけないかな?と思いながら、少しずつ近づいていくと、その人の横顔が見えた。黒い髪は春風になびいて、そのサファイアのような綺麗な瞳を露にしている。  僕、いや私は、ジュリエットは、その瞳を、その横顔を知っている。 「もしかして、ロミ…オ?ロミオなの?」  無意識的に声が出てしまった。はっとして口を押さえるが、時すでに遅し。彼はこちらを振り向いて、しばらく僕の顔を見つめる。あれ?僕、もしかして顔に何かついてるのかな?なんて思いながら頬を触っていると、彼は唐突にこちらに近づき、こう言った。 「俺、お前のことを知っているような気がする。お前、名前は?」
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