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露美side
やらかしてしまった…。と内心落ち込んでいると、
「え、ぼ、僕は木戸樹里。よろしくね!えっと~、」
そいつ…、樹里は自己紹介してくれた。俺の名前も教えなくては。
「門田露美。よろしくな、樹里。」
そう言うと、樹里は花が咲いたような笑みで、
「露美くん!よろしくね!」
と言ってくれた。可愛いな。
にしても、樹里か…。聞いたことがあるような…、無いような…。
記憶を探ってみても、樹里という名前には覚えがない。男だからだろうか、とも思ったが、樹里という女にあった覚えもない。
そう言えば、あいつもそんな名前だったような…、
そこまで考えて、さっきから樹里が一言も話していないことに気づく。
顔をあげて樹里を見ると、樹里はうつむいて口元に手を当てていた。
具合が悪くなってしまったのだろうか?そう思って
「どうかしたのか?具合が悪いのか?」
と聞き、心配のあまり樹里の顔を覗きこみ、頭に手を添えた。だが、樹里は顔を上げたかと思うと、一瞬泣きそうに瞳を揺らしてから、ふわりと悲しげな笑みを浮かべて、
「だ、大丈夫だよ!心配してくれて、ありがとう。」
と言い、瞬時に俺から距離をとる。頭に手を添えたことがそんなに嫌だったのか…、と落ち込んでいると、樹里が
「ほら、もうすぐ入学式始まっちゃう!行こう?」
と俺の手を取って駆け出した。俺はそのまま、樹里と一緒に校舎へ向かった。
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