1

5/5

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
露美side やらかしてしまった…。と内心落ち込んでいると、 「え、ぼ、僕は木戸樹里。よろしくね!えっと~、」 そいつ…、樹里は自己紹介してくれた。俺の名前も教えなくては。 「門田露美。よろしくな、樹里。」 そう言うと、樹里は花が咲いたような笑みで、 「露美くん!よろしくね!」 と言ってくれた。可愛いな。 にしても、樹里か…。聞いたことがあるような…、無いような…。 記憶を探ってみても、樹里という名前には覚えがない。男だからだろうか、とも思ったが、樹里という女にあった覚えもない。 そう言えば、あいつもそんな名前だったような…、 そこまで考えて、さっきから樹里が一言も話していないことに気づく。 顔をあげて樹里を見ると、樹里はうつむいて口元に手を当てていた。 具合が悪くなってしまったのだろうか?そう思って 「どうかしたのか?具合が悪いのか?」 と聞き、心配のあまり樹里の顔を覗きこみ、頭に手を添えた。だが、樹里は顔を上げたかと思うと、一瞬泣きそうに瞳を揺らしてから、ふわりと悲しげな笑みを浮かべて、 「だ、大丈夫だよ!心配してくれて、ありがとう。」 と言い、瞬時に俺から距離をとる。頭に手を添えたことがそんなに嫌だったのか…、と落ち込んでいると、樹里が 「ほら、もうすぐ入学式始まっちゃう!行こう?」 と俺の手を取って駆け出した。俺はそのまま、樹里と一緒に校舎へ向かった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加