魔法使いが60歳って。

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 今でもあの時の玲子ちゃんの涙が忘れられない。お見舞いに行った三日後、玲子ちゃんは帰らぬ人となった。  享年20歳。  玲子ちゃんはテニス部のエースだった。運動が苦手だった私には、白いボールをザッザッと右へ左へ追いかける小麦色の玲子ちゃんの姿が本当にカッコ良くて、サーブやレシーブの時の「ウッ」という短い声が今でも耳に残っている。  病院での彼女の肌は透き通るように白かった。眩しいくらいの健康美で輝いていた玲子ちゃん──生きていたら今頃何してた? テニスのシニアクラブでまだボールを追いかけていたかな。  神様か誰か分からないけど、私にこんな力を与えた意味は何? 同級生の早過ぎる死を阻止出来ない理由はないよね。寧ろその為の力なのじゃないの?
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