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事故は西嶋君20歳の時。
歩道を歩いていた西嶋君の前からサッカーボールを抱えた男の子が西嶋君の方に歩いて来たの。その時、凄いスピードの自転車が西嶋君の横を通り過ぎて、そのまま男の子のすぐ脇をすり抜けて行った。驚いた男の子は思わずボールから手を離してしまい、ボールはコロコロと車道に転がって、男の子はボールを追っかけた。そこに車が──
西嶋君は咄嗟に車道に入って男の子を抱え込み、車は二人に突っ込んだ。男の子はかすり傷で済んだけど西嶋君は大怪我を負ってしまう。
西嶋君は後に言うの。その時の自分の行動をまるで覚えてないって。気付いた時は病院のベッドの上だったって。人を助けるって事が体というか精神に、西嶋君という人自体に組込まれていたんだと思った。
素敵だよ。西嶋君。
でもそのせいで西嶋君はオリンピックに出場出来なかった。ベッドの上でどんな思いでオリンピックを見たのだろう。怪我は思いのほか酷くて、直ぐにでも復帰出来ると信じていた西嶋君は担当の医者に過酷な現実を突きつけられる事になる。
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