第一章 精鋭部隊の劣等兵

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会議室に向かう途中、船の揺れが落ち着いた。どうやらどこかに停船したようだった。 「失礼します」 緊急会議室の扉を開けると、すぐそこに隊長のエドウィンがいた。鋭い目つきでこちらを睨む。 「遅い、遅刻だ」 第一声がそれだった。中にはすでに隊員が全員集まって、椅子に座っていた。彼らと顔を合わせるのは、ブラッドを紹介するために集合した以来、二回目だ。 「えっ、あっ、すみません!」 ここでようやく自分以外の全員がいることに気づく。 「いいから、さっさと座れ」 入り口に一番近いところに座る副隊長のボブ・アドラーが言った。座っている姿を見ても高身長で、服の上からでもよくわかる鍛え上げられた筋肉が、怪力の持ち主であることを想像させた。 その男が一つだけ空いた空席を指差した。ブラッドの席だ。座るとエドウィンが立ち上がる。 「今日、ここに集まってもらったのは、ここから少し離れた島で支援要請があった」 説明された要請の依頼はこうだ。依頼を送った島では、ゾンビが現れ、街はその防衛に追われていて、資源も物資も足りていない。そこで、物資の配達と周辺の安全確保を頼まれたのだ。 ゾンビというのは、数年前、この星に突然現れた人型の凶悪生物だ。人間や動物を見つけては捕食しようと襲ってくる。ただ、知能、身体能力は大きく低下し、感情がなく、食べるという本能だけを持って活動している。そんなゾンビも元は人間だったと言われている。ゾンビに噛まれた人間や動物が死んでいるにもかかわらず、突然起き上がり、襲ってきたという報告があったからだ。人類が地球という星に住んでいた時代にも、実際にいたわけではないが、よく似た特徴を持つ生物が想像されていたようだった。当時もその生物を「ゾンビ」と呼んでいた。その呼び名を引き継いでいる。しかし、今になって、ゾンビがどうして現れたのか、そして、原因はなんなのか、全く分かっていなかった。 エドウィンが部屋の後ろを指差す。 「フェデリカという街からの依頼だ。各自、街内又はその周辺で活動してもらう。後ろに担当とペアを書いておいた。確認して、島到着までに準備を済ませておいてくれ。それぞれの作戦については後で連絡する」 そう告げ、エドウィンが部屋を出て行った。扉が閉まるのを確認して、他がぞろぞろと立ち上がる。部屋の後ろのホワイトボードに視線が集まる。ブラッドは自分の名前を探した。一番下に書かれていたのを見つける。配達班と記されていた。名前の横にはダニエルという文字。
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