第一章 精鋭部隊の劣等兵

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「ダニエルとの初任務はどうだったんだい? 聞かせてくれよ」 フェデリカへ向かうヘリの中で、カリーナが口を開いた。それまでは無言でヘリの音だけが聞こえていただけだった。ヘリの音は轟音だが、つけているヘッドホンをマイクで充分に会話できる。 視線をあげると、レーシアは外の景色を眺め、カリーナはこちらを真っ直ぐ見ていた。 「どうだったんだ?」もう一度尋ねた。 「初めてゾンビと対面しました」 「そっか、あんたはゾンビ見たことなかったんだ。あんたの故郷は感染してないのか」 ブラッドの故郷は森に囲まれた小さな町で、感染は全くしていなかった。田舎すぎることもあって、ゾンビの噂が流れてくるのも遅く、ゾンビ自体を知らない人もいた。 「そんな田舎なんて思わなかった。そこまでしてよくここに入ろうと思ったな」 「そんな田舎でもQUIETの話は流れ込んできましたから」 「あたしらはそんなに有名なのか。なかなかいいじゃねえか」 思い上がるレーシアにカリーナが冷静に一喝した。 「私たちに名声はいらないわ。求めるのはミッションの成功だけで十分よ」 落ち着きがあるが、鋭いトゲのある言葉にレーシアも苦い顔をした。 「ピンポイントランディングまで、あと3分だ」 機長のフランが到着までの時刻を伝える。それを聞いてレーシアは慣れた手つきで準備を始めた。足元に置いてあった装備を装着して、再度、所持する拳銃の装弾数を確認していた。カリーナは窓を眺めたまま動く様子はない。 それで間に合うのかと疑問に思いながらも、ブラッドも準備を始める。装備を見直し。さらに今回のミッションで使う工具箱を点検する。中身はしっかり入っているか、箱はしっかり閉じられているか、持つ取手は頑丈であるか。 「今回のミッションはフェデリカ出入り口の封鎖。出入り口はブラッドに任せる。あたしらはあんたの護衛に回る」 ヘリの着陸地点は、フェデリカから少し離れた位置にあった。昨夜、殲滅隊による、ゾンビ殲滅が行われたが完全ではないため、安全にミッションを開始するための動きだった。すこし歩かなければならない。しかも、重い工具箱を持ちながら。 「こちらアドラー。三人とも聞こえるか?」 ヘリに専用のヘッドホンから、副隊長の声が聞こえてきた。 「ブラッドです。聞こえています」 もちろん音声は三人とも聞こえている。 「そろそろ着くみたいだが、お前たちが第一陣だ。担当は北口だから、集合地点の南口まで距離がある。封鎖の作業次第で、その後の動きも変わってくる。早く終われば、集合までその場に止まらなくてはならない。逆に遅れれば、他の者を待たせることになる。それはお前たちに限ったことではないが、時間には気を配るように」 「了解。頭に入れておきます」 「あたしらは、ゾンビの身体回収もあるし、三人もいるから、そこは上手く調整できるさ」 「身の安全を最優先にして、任務に当たってくれ」 そう告げて通信が切れると、今度はアスコートの声が聞こえ始める。 「もうすぐフェデリカだ。降りる準備はできてるな? 今日は着陸まではしない。地上ギリギリまで降下するから飛び降りてくれ」 ヘリのドアのロックが外れる音がした。ヘリはスピードを落とし、徐々に高度を落としていく。 「準備はできてるな」 カリーナが再確認し、ドアを開けた。下を覗き込むと地面はすぐそこだった。
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