第一章 精鋭部隊の劣等兵

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「Dプラントか」 横でカリーナが呟いた。 名前が決まったことと、感染源が解明しかけていることに、会議室は何やら達成感のようなものを感じられた。 「どうしたの、カリーナ」 レーシアが不安そうに声をかけた。 ブラッドもカリーナを見る。いつも元気な彼女の顔は、見たこともないくらいに疲れているようだった。 「大丈夫か? カリーナ」 心配そうにエドウィンも声をかける。 「あっ、はい。全然大丈夫です。ただ、これからどうすんのかなって思って。目の前にあった目的を達成して、次はどうすればいいのかなって……」 大きな目標を達成するために、小さな目標を段階のようにして達成していく。今、感染する原理がわかり、これからどうすればいいのか見失っていた。 「我々の最終目標はゾンビになるこのDプラントを世界から消し、現れた原因を明らかにすることだ。この目的が変わることはない」 「それはみんなわかってる。肝心なのはこれからどうするか。そうでしょ、エドウィン」 「レーシア、今日はよく喋るんだな」 アドラーがそう驚くが、ブラッドは隊長のエドウィンを呼び捨てで呼んでいることに驚いていた。 レーシアはいつものような冷たさでアドラーを避けた。 「これからの方針はQUIETとしても決めておくべきことよ」 熱くなっているレーシアを見て、ブラッドはカリーナを庇っているようにも見えた。 エドウィンが再び考え込む。ブラッドは目の前で繰り広げられている会話には口出しせず、ベテランの人たちの言葉に集中していた。 「ついさっき、クリスティア君の話で、感染の原因が判明した。これから医療班でワクチンを作り始めるだろう。QUIETはそのワクチンが完成するまで、いつものように人々を助け、適切な情報を世界に発信する」 エドウィンの答えにレーシアは納得していなかった。カリーナはいつの間にか会話の外に外れ、ブラッドのように聞いていた。 「具体的にこれからの方針を決めたいのであれば、何せ急ぐ必要はない。ここにはダニエルもいない。また今度でもいいのではないかな」 エドウィンは全員に言うように語りかけたが、ブラッドにはレーシアに向けた言葉に聞こえていた。 「今日は皆よく頑張った。結果は最良とはいかなかったが、目標はすべて達成された。今日はよく休んでくれ。我々はいつ出動するかわからない。明日以降、いつでも出動できるようにコンディションを合わせておいてくれ。では解散」 会議を終えるとアドラーとカリーナは一足先に部屋を出て行った。ブラッドはスクリーンや椅子を片付けるレーシアの手伝いをすることにした。エドウィンはクリスティアのUSBメモリーを借り、パソコンでベンダーのレントゲン写真をもう一度見返していた。 「それ、そこに置いといて」 積み重ねた椅子を部屋の隅に置いた。レーシアはスクリーンを写す機械を棚の中にしまっていた。その際ブラッドは機械の詰まった棚の中を見た。銃も何丁か見えていた。 片付けを終えると、暗い部屋に外から眩しい光が入る。扉が開き、大柄なシルエットが現れた。
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