第一章 精鋭部隊の劣等兵

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「……君は」 面識のない二人の間にブラッドが入る。 「彼女は医療班のクリスティアさんです。感染の原因が分かったと言うことで、会議に参加してもらっていました」 「感染の原因がわかったのか」 「これから殲滅隊にも報告をと思っているところでした」 USBメモリーを手に取り、「失礼します」と告げ、速やかに出て行くクリスティアをアスコートは止めた。 「君からも話を聞きたいんだが、時間あるかな?」 問いにクリスティアは微かに微笑み「はい」と答えた。ブラッドが椅子を持ってきて、アスコートが中心になるように座った。 「まずはブラッド君からお願いしてもいいかな」 「わかりました」 ブラッドは今日の任務の様子、ベンダーを発見したときの状況からアルフレッド号に到着するまでの過程と様子を詳細に伝えた。 「君はダニエル君とチームじゃなかったか?」 「いえ、朝の会議でカリーナさんたちのチームに入ることになりました」 「そういうことか。ベンダー君は実は派遣される予定ではなかった。もう一人派遣してくれ、と言われて私が選んだのだ」 自分の変更がなければベンダーは派遣されず、こんなことにもならなかったんじゃないか、そう思うブラッドは重い責任を感じた。 「ベンダー君の身体は今どこに」 話し相手をクリスティアに変える。 「今は遺体安置室に置いてあります。解剖痕が残っていますが、お身体はご覧いただけます」 「そうか。彼の最後の状況は」 「感染後、船内でゾンビ化し、殲滅隊員が射殺しました」 平然と言われたクリスティアの言葉に眉にしわを寄せた。 船内で起きた出来事を淡々と語られた。 「ありがとう。よくわかったよ。感染源については殲滅隊全体にも説明をお願いできるかな」 「勿論です。もともと、そのつもりでしたから。いつでも呼んでください」 「急な話だが、明日の朝にあるミーティングでお願いしたい」 「わかりました。準備しておきます」 「忙しいのに呼び止めて悪かった。自分の仕事に戻りなさい。今日はありがとう」 一礼して立ち上がるクリスティア。 「あっ、椅子は僕が片付けておきます」 「失礼します」と声が聞こえ、扉が閉じられた。 「医療班は愛想が悪い人が多いが、あの子は違うようだな」 独り言なのか、自分に言っているのか分からず、とりあえず黙ることにした。
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