第二章 苦悩

3/19
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
「今日は任務で呼び出したわけではない」 隊長が最初にそう切り出した。 「ここから100キロ先に港がある。一度、その港に停泊したいと思っている。アルフレッド号の隊員は最近忙しく、休みが少なかった。その分、少しの間、港で休む時間を設けたいと思っている。ずっと船の上だと気もおかしくなってしまう。外の空気を吸いに行こうということだ」 「そう言って、また俺たちをこき使うわけじゃないですよね?」 不満そうに言ったのはダニエルだった。フェデリカでベンダー氏との一件があった以来、ブラッドはほとんど関わっていなかった。ダニエルは何は何か聞かれたのだろうか。どんな気持ちでいたのか、ブラッドは気になり彼の方を見た。今日の彼はいつも通りの様子で座っていた。 「いつもそんなつもりはないのだが、今回もいつもと同じで貿易品を運んでもらいたい」 「それが今回の任務なのね」 「任務ということでもないだろ」 アドラーが鼻で笑う。 「貿易品も武器くらいだ。一人一箱ずつ持てば全て運べるだろう」 ブラッドは船に乗った当時、隊員が食べる食料やそれを手に入れる方法はどうするのか気になっていたが、それが今解決した。 「あと二時間ほどで街に着く予定だ。船から降りる際、品を運んでくれ。品はここの会議室に置いておく。話は以上だ」
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!