第二章 苦悩

4/19
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
とても短い話だった。その話を終えると続々と部屋から出て行く。ブラッドはそれを眺めていると、視界の右側から茶髪が覗き込むようにして現れた。 「おい、大丈夫か?」 座ったまま考え事をするブラッドをダニエルが気にかけた。考え事というのは、今日の朝思ったことだった。フェデリカの任務が告げられるその日、夢を見た。主観で焼けて行く街の中、自分はそこに立っていた。そして次の日、その夢の続きを見た。同じ場所で拳銃を握り、フェデリカで見たゾンビのような人を撃ち殺した。今も理由や目的はわからない。わかることは、夢の中の自分は必死だったということだけ。もちろん、夢の中の自分は、目の前のことを夢だとは思っていない。 大抵の夢はすぐ忘れてしまうが、あの夢は鮮明に覚えていた。だからこそ、今朝見た夢もその続きだと気づくことが出来た。 「任務ではないが、港に着いたら仕事がある。遅れるなよ」 隊長がこちらを睨むように見ていた。 「だってよ新入り」 「ダニエル、お前も同じだ」 「はいはい」 適当な返事で、逃げるように出て行った。 残されたのはブラッドと隊長エドウィンのみ。部屋に戻ろうと立ち上がる。 「ブラッド」 最初の一歩を踏みかけたところで声をかけられた。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!