第二章 苦悩

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「なんでしょうか」 「近いうち、お前が主の任務をやってもらうつもりでいる。船から指揮するのは私の仕事だが、現場からお前に指揮をとってもらう」 「僕が、ですか?」 「そうだ。任務の内容次第だが、基本は俺の指揮なしでやってもらうつもりだ。常に船からの指示で上手くいけばいいが、そうは行かない。現場にいる者にしかわからない状況もある。QUIETは危険任務において、常に先頭に立つ存在だ。他の隊員を仕切れないようだと、ここではやっていけない」 「テストってことですか」 ついに与えられたチャンス。ブラッドの表情は固くなりつつも、心は弾んでいた。 「今までやってきた生ぬるいテストだとは思うな。お前の判断一つで、隊員が死ぬこともある」 「分かってます」と言おうとしたがやめた。軽い返事をすべきではないと考えたブラッドは黙り、考えて声を出した。 「どんな任務であろうと、全力を尽くします」 「当たり前のことを言うな」 あっけなく返された。 「そもそもお前はなぜ入隊試験を受けた?」 理由はブラッドの中ではっきりしていた。 「少しでも多くの人を助けるためです」 堂々と答えた。それを聞いた隊長はため息をつく。 「それならQUIETとして戦うかを考えた方がいい。ここの部隊の任務はいつも状況が最悪だ。明らかに死ぬ人間の方が多いことばかりだ。その中で我々は生き残る人間を選別し、救助、又は処置をする。全員は救えない。それがQUIETの任務だ。もし、お前の気持ちが本気なら、お前にQUIETは合っていない」 ブラッドは時が止まったようだった。ようやく見えてきたチャンスを掴もうとしている今、隊長の話はブラッドとって、とても衝撃的だった。自分の理想は叶わないと断言されたも同然だった。 「人を助けたいのなら殲滅隊の方がいいだろう。私がアスコートに話してやっても構わない」 殲滅隊に行く前提で隊長は話し始めた。ブラッドは首を振る。 「他の部隊に移動するつもりありません」 「……そうか。わかった、お前の活躍を期待するとしよう」 「ありがとうございます」
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