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「……んっ」
チュッと響くリップ音。先程まで私の体を弄んでいた男は生まれたての姿のままバスルームへと向かった。
情事を終えた後、彼はいつもそう。
前に一度彼の背中を追ってバスルームに入った事があった。
私の体にキスの雨を降らせ愛を囁いてたはずのその唇からとてつもない誹謗中傷が飛び出して来たのだ。
『バスルームは俺の城』
彼の格言をお互い素っ裸で聞くことになるとは思わなかった。
それ以来、私は彼の背中を追わないし、なんならさっさと服着て寝てしまう。それが最近では当たり前。
つまらないつまらない、平和な毎日……。
幸せなはずなのにどこか物足りない。何をしても、何度体を重ねても心の奥深く迄は染み渡らない。
彼との情事はいつもどこか冷めている気がした。
そして、一つの予感があった。
1年過ごした彼とのこの関係はそろそろ終わりを迎える————
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