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最近は有岡さんの息子の志貴くんも店を手伝っている。
志貴くんは大学3年生。
にょろにょろと高い長身に端正な顔つき。マスターに似たイケボを持っていて、志貴くんがお店にいるときは若い女の子がチラホラ来るようになった。
ぶつくさと愚痴を零している間も有岡さんはシェイカーを振ったり軽いおつまみを作ったりと忙しそうだった。
カウンター席と5、4人掛けのテーブルが2セットの小さなBAR.Ali.。
「はぁー、寂しい、寂しいよ、ましゅたー!どっかに裏切らなくて、私を愛してくれるイイ男落ちてない?あとついでにちゃんと働いてる人ー!」
「ぶふっ……」
有岡さんに言ったこの言葉を私の座る椅子の二つ開けた先に座る男が反応した。
……今、笑った?
「……なにか?」
いつもだったらこんな知らない人に管を巻く事はしない。だけど、今日は有岡さんに飲んでも良いって許可も貰ったし、何より失恋した当日だし。
ちょっとくらい赤の他人に迷惑かけてもバチは当たらないよね?
「……失礼。あまりにも可愛くて」
そう言って目尻にシワを寄せ、人懐っこい笑顔で私を見る……お兄さん。
「……あなたも私を馬鹿にするの?」
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