白と薄紫

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その村には身寄りの居ない、天涯孤独な少年が居りました。 少年は『(ヴァイス)』と呼ばれていました。 何故なら髪も肌も真冬に積もる雪のように白かったから。 その中で、正反対に光を放つ深紅の瞳。 村の大人達はそんな彼を大層気味悪がって、最低限しか関わろうとはしません。 ですが子供達は逆でした。 村の子供達は、大人達が彼を避けているのを見て彼を『異物』と判断し、虐めていたのです。 ただ一人の少女を除いて··· 少女は『薄紫(リーラ)』と呼ばれていました。 ライラック色のふわふわとした長い髪が良く似合う、心優しい少女。 虐められて怪我をした(ヴァイス)を強引に連れて帰っては、手当てをする。 それが彼女の日課でした。 「また今回も派手にやられたのね」 「下手にやり返す方が酷くなるんだ」 「そのうち(ヴァイス)じゃなくて(ロート)になっちゃうんじゃないの?」 そんなやり取りをするのもいつもの事。 薄紫(リーラ)と居る時だけが、(ヴァイス)の心休まる時間でした。 けれど、それも長くは続きません。 薄紫(リーラ)の嫁入りが決まったのです。
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