8人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
その村には身寄りの居ない、天涯孤独な少年が居りました。
少年は『白』と呼ばれていました。
何故なら髪も肌も真冬に積もる雪のように白かったから。
その中で、正反対に光を放つ深紅の瞳。
村の大人達はそんな彼を大層気味悪がって、最低限しか関わろうとはしません。
ですが子供達は逆でした。
村の子供達は、大人達が彼を避けているのを見て彼を『異物』と判断し、虐めていたのです。
ただ一人の少女を除いて···
少女は『薄紫』と呼ばれていました。
ライラック色のふわふわとした長い髪が良く似合う、心優しい少女。
虐められて怪我をした白を強引に連れて帰っては、手当てをする。
それが彼女の日課でした。
「また今回も派手にやられたのね」
「下手にやり返す方が酷くなるんだ」
「そのうち白じゃなくて赤になっちゃうんじゃないの?」
そんなやり取りをするのもいつもの事。
薄紫と居る時だけが、白の心休まる時間でした。
けれど、それも長くは続きません。
薄紫の嫁入りが決まったのです。
最初のコメントを投稿しよう!