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薄紫の嫁ぎ先は村の周辺を領地にしている貴族の屋敷でした。
村長の娘でもあった彼女に拒否権はありません。
この婚礼を拒めば、この村にどんな無理難題が降り掛かるかわからないからです。
彼女は、己の意志を押し殺して遠くへと嫁いで行きました。
唯一の居場所を失い、白は荒れました。
今まではやり返す事無く、相手の気が済むまで殴られていたのが一転。
心の激動をぶつけるかのように、やり返すようになったのです。
ですがやはり、多勢に無勢。
大勢に対したった一人では、ボコボコにされて終わりでした。
殴ってきた者が去り、一人取り残された白。
けれどもう、薄紫がやって来る事はありません。
たった一人、白は泣きました。
己の無力さに泣きました。
一人ぼっちの寂しさに泣きました。
心にぽっかりと空いた悲しみに泣きました。
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