古城の畔にて

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「よしよし、怖かったんだよね。解ってるよ、そんなのショコラの本音じゃないってこと。 …あ、ごめん。そろそろ僕、いかなくっちゃ。 じゃあ後、頼んだよ。 バイトクビになったらマジでヤバからね。ここの家賃も払えなくっなって、僕ら野良吸血鬼になっちゃうからね」 「は、はいぃ♥️」 頭をナデナデされて、簡単にいなされてしまう私。 「いい?おでんは浸かり具合を確かめてから、肉まんは入れたてのは売っちゃダメで、それから…」 「はいはい、解っております。 ……行ってらっしゃいませ、ご主人様」 ご主人様のお出かけの時、私はいつも少し寂しい。 声のトーンを落とした私を振り返ると、彼はまた、私の頭を一撫でした。 「ほらほら、そんな顔しないの! 美味しい(ゴハン)が手に入ったら、お前にもちゃあんと分けてあげるから」 「ほ、ホントですか!?」 「ああ、首尾よくいけば、だけど」 軽くウィンクして見せる彼に、私はピシッと敬礼の姿勢を取った。 「はっ、バイト(そっち)の方は何とぞ、このショコラにお任せください! それではご主人様、お気をつけて」 急に元気になった私に満足そうに頷くと、彼はベランダの手すりに足をかけた。 「じゃ、行ってくるねー」 ファサッ。 と思うと、窓から夜空にはばた… くこともなく、部屋のすぐ下に停めてある原チャに跨がり(部屋はワンルームの一階なの)、颯爽として行ってしまった。
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