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死を目前に、私の身体は温かい掌に抱き上げられていた。
冷たい四肢に、再び熱い血が巡り出す感覚があり、霞んだ目に、キラキラ光る金色が見えた。
これは、いわゆるお迎えというやつだろうか。
「…あの、もしかして天使の方…ですか?
私のお母さんが天国に行ってませんか?あの、出来たら私…」
「し!もう少し小さな声で。
今は一時的に僕のエネルギーを与えているだけだからね」
今度は、唇に指を当てた姿がはっきりと映った。
ああ、そうだった。
私はふっと落胆した。
この者は、天使なんかじゃない。
だって私は_____
「ねえ君、何でこんなことしたのさ。
君も眷属の端くれなら、僕が誰だかくらい解るはずだよ?
それを…
僕の血を吸おうだなんて、そんな無謀なこと」
そう、この者は吸血鬼。
我々の眷属の頂点に君臨する、夜の王だ。
彼らにとっては、蚊を叩くくらいの力でも、我らには致命傷となるほど、力の差は歴然としている。
私は、しょんぼりと眼を落とし、理由を告げた。
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