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「どうだいショコラ、似合うかな?」
斜め後ろを振り返り、ご主人様は私に向かってキラリとポーズを決めてみせた。
はらり。
その姿を一目見た瞬間、私のつぶらな瞳から、それより大きな涙が落ちる。
「わわっ、だ、大丈夫かい?
お腹でも壊したの」
私を気遣い、あたふたと心配するご主人様に、私は強く首を振った。
「ううっ、違います。
似合うなんてもんじゃありません!
ショコラは…ショコラは嬉しゅうごさいます…
ご主人様がようやくバカな人間ごっこを止め、本来のお姿に戻られたのだと思うと…ぐすっ。
さあ!
今こそあなた様の真の力を見せつけ、人間どもを恐怖のどん底に陥れるのです!」
ぐっと突き上げた拳をボーゼンと見ていたご主人様は、やがてプッと吹き出した。
「やだなあ、ヒトを悪魔みたいに言わないで。違うよ、これはね、ハロウィン用の仮装さ」
「仮装…?」
「そう。人間が、魔女やミイラ、ドラキュラのキャラクターに扮装して遊ぶのさ。
僕はそのパーティーにお呼ばれしたってわけ」
「む、そうですか…。む、パーティー…」
「全く。前の夜に散歩に出してやったとき、人間にホウキで叩かれて死にかけたからって。
根に持ちすぎだっての」
「…む。
で、でも人間は卑怯です!
十分図体デカイのに、小動物の我々に武器(ハタキ)を使ってくるんですよ?!
ちょっと血をもらおうとしただけなのに…」
ブーたれる私に、ご主人様はニコリと微笑んだ。
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