小鳥

小鳥

ピチュピチュ
近くで小鳥がさえずっていた
辺りを見まわしても
小鳥の姿は見当たらない
ふと下を向くと
白いシャツの胸ポケットにある
小鳥の刺繍がさえずっていた

目が合うと
♪ピ
と鳴いたあとは
刺繍の役目とばかりに
じっと黙ってしまった

いいよ
歌っていいよ
小鳥の頭をなでると
♪ほんと？
と首をかしげた

森や公園や緑の丘に来ると
小鳥は歌いたくて
歌が大好き！というように
可愛くさえずり
しまいにはシャツを抜け出して
森の樹々の舞台に立ち
澄んだ歌声を
遠く優しく響かせた

小鳥が
遠くへ飛んで行かないよう
白いシャツの下
胸の鼓動が聞こえないよう

♪家に帰ろう
と口笛を吹いた