女装レイヤー×陰キャオタク

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「あのマフラー、本当は英司にあげようと思って買ってきたんだ」  昨晩の余韻が残る明け方のベッドで、淹れたてのコーヒーを啜りながら、ふと修は呟いた。 「あの、って……池コスでくれたやつか?」 「……うん」  頷くと、なぜか修は詫びるように目を伏せる。 「ごめんね。本当は帰国してすぐに渡したかったんだけど」  そして修は力なく肩を落とす。マフラーを渡せなかったことを、というより、英司の告白を拒んでしまったことを今更のように悔いているのだろう。  そんな修のうなだれる肩を、無言のまま英司は抱き寄せる。 「いいさ。どのみち受け取れたんだし」  例のマフラーは、今では毎日首に巻いて通勤している。温かいのはもちろん、カシミヤ地ならではのシンプルな高級感がビジネスシーンにぴったりで、オフィスだけでなく取引先でも好評を博している。 「うん。でも……それでも僕は、英司に渡したかったんだ。わかめ子さんじゃなくて……同一人物だとわかった後でも……やっぱり、少し悔しい」  ずず、とコーヒーを啜ると、修は小さく溜息をつく。その悲しげな横顔に吸い寄せられ、そっと口づけると、柔らかなぬくもりが胸を満たした。 「何だそれ、変なの」 「やっぱり変かな」 「変だな。けど、お前らしいや」  今度はその唇に口づける。修の手からコーヒーを奪うと、それをサイドボードに移しつくちづけたくつ修をベッドに押し倒す。 「ずっと……大事にしてくださいね」  濡れた瞳で英司を見上げながら、縋るように修が乞う。マフラーのことを言っているのだろうか。それとも――いや、この際どちらでも構わない。 「ああ、もちろん」  微笑むと、英司はそっと唇を重ねた。
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