女装レイヤー×陰キャオタク

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『そういえば、みけおさんはどうして彼が好きなんです?』 『やはり、優しいところでしょうか。あと、僕のような日陰者も、ちゃんと人間扱いしてくれるところですね』 『人間扱いって……また随分と低いハードルですね。もう少し、理想は高く持った方がいいんじゃないですか? みけおさん紳士だし、それに結構イケメンだし。そうでなくとも、その程度の条件なら別に彼一人にこだわらなくてもいいと思いますよ?』 『なぜです』 『と言いますと?』 『すみません。なぜ急に、そのようなことを僕に仰るのかが理解できない、とお訊きしたかったのです』 『それは、、、改めて考えたんですが、仮にその人がバイではなくヘテロなら、みけおさんは永遠に恋を成就できないわけじゃないですか。それって、みけおさんにとって辛い事じゃないんですか』 『その点は大丈夫です。自分の性的嗜好を自覚した時から、そうした辛さは僕の人生の一部でした。その上で僕はあの人に恋をし、今は、そのことを何にも代えがたい幸せだと感じています』 『つまり、気持ちは伝わらなくてもいい、ただ想わせてくれればいい、と?』 『はい』 『それでも……誰かと恋人同士になりたいとは思わないんですか。僕は、みけおさんにはもっとちゃんと幸せになってほしいんです。愛する人と結ばれて、デートしたり、下らないことで笑い合ったり、そういう当たり前の幸せを手に入れてほしいんです』 『繰り返しになりますが、あの人を想うことが僕の幸せなんです』 『別の人じゃ駄目なんですか? 別の、バイやゲイの人では?』 『僕はわかめ子さんに感謝しています。こんな僕のつまらない人生相談に乗って頂けるのは、オフを含めてもわかめ子さんの他におりません。それでも、僕にとって何が幸せかそうでないかは僕自身が決めるものです。突き放すような言い方になってしまいますが、それを決めるのはわかめ子さんではありません』
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