ゆりかごに鮟鱇は眠る

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 群青色の世界で、遥か上の光を見ている。エメラルド色に揺らめいているのは太陽だと、私は知っている。  体温の無い私を、同じ温度の水が取り巻いている。冷たいのか温かいのかよくわからないが心地よい。ごぉーと遠くで聞こえているのは、あれは大きな、海流の音。どこか懐かしいと感じるのは、あれが原初の記憶に染み付いた音だからなのか。胎児が聞いているという、胎内の音によく似ている。波の音がきらきら響く。時折クジラの声がする。  ここはゆりかごなのかもしれない。やわらかな砂にもぐったまま私は考える。だって今の私は、食べて、眠ることしかできない。誰かに世話をしてもらうことはないけれど、誰かの役に立つこともない。ただ青い暗闇で、目の前に魚が通り過ぎるのを待つ毎日。私の魂はきっと夢を見ているのだ。穏やかな深い海の夢を。この夢は誰がもたらしたのか。私の中の妄想なのか。  ——だとしたら、よほど私は自分にご褒美が欲しかったのかもしれない。  一人の時間がずっと欲しかった。どこへ行っても誰かがいて、どこへ行っても気を遣って。私はすっかり疲れていた。疲れはまるで毒のように身体に溜まった。じわじわと体が重たく、食事が億劫になっていった。お腹が減らなかったわけではない。何を食べても、一緒に食べている人のことやら、さっきまで話していた人のことやら、話す予定のある人のことやらを考えてしまって、どれもこれも似たような味だと感じるようになってしまった。休みの日はベッドから出ることもほとんどせず、眠るか、ぼんやりと部屋を眺めて過ごす。友人からの連絡にはこたえるけれど、本当は、電話は嫌い。
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